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「広告費0」なのになぜ? 12年前発売のヘアミルクが爆売れ、オルビス社長に聞く戦略(4/4 ページ)

» 2024年03月01日 09時00分 公開
[大村果歩ITmedia]
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2年間で10倍以上売れた 「長期のバズ」を記録した要因

 発売当初の販売数は年間10万本強だったが、オーガニックの口コミだけで売り上げを伸ばし、21年には約21万本まで成長した。Xでバズった22年には60万本、そしてベストコスメ大賞を獲得した23年には250万本と、この2年間で10倍以上の伸びを見せる。

 22年から約2年間にわたる「長期のバズ」を記録した要因を聞くと、小林社長は「ロングセラーになる良いプロダクトを開発したということしかないんですよね」とほほ笑む。

 「実際の口コミを見ると『べたつかないのに髪が軽く、サラサラになる』など、発売初期からのロイヤルなお客さまと、最近のバズ投稿で書いてあることはほぼ同じなんです。

 バズを起こそうという考えは一切なく、長く愛されるロングセラーの商品を作れている強さが、Xでバズったタイミングで花開いたのだと考えています。

 また、バズってから新規でご購入いただいたお客さまのF2転換率(新規からのリピート率)は約4割。かつ、1度リピートしていただいて以降のリピート率はもっと高い傾向があります。商品のリピート率が高いことで、投資計画も立てやすくなりますね」

コスメ 小林琢磨代表取締役社長(撮影:幡原裕治)

 「商品が売れるために必要な要素は便益と独自性だといわれています。便益は、髪をサラサラにするなど、商品の価値ですよね。しかし便益だけでは代替されてしまう可能性もあるので、便益がありつつ独自性があることが重要です。

 この商品の独自性は、オルビスがスキンケアブランドであること。スキンケアブランドが出しているヘアミルクだということで、信頼性が増したり、ギャップが生まれたり、独自性がありますよね。この独自性がハマり、長期のバズを記録しているのだと思います」

 広告費0、リニューアルも一切せずに「強い商品力」で売り上げを伸ばし続けたオルビスのヘアミルク。実は、オルビスはこのヘアミルクのバズを活用してさまざまな戦略を講じ、他商品、ひいてはブランド全体の売り上げを引かげることにも成功したという。

 後編では、22年のバズから一気に認知を広げた戦略と、ヘアミルクを起点に置いたブランド全体のマーケティング戦略を探る。

<後編:「バズり」を逃さず「関係ない商品」も売る――オルビスの緻密な戦略がすごい

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