障害者雇用も「ちゃんと稼ぐ」 DMMの専門組織「BC部」が黒字を実現できたワケ(1/3 ページ)

» 2024年03月29日 09時00分 公開
[大村果歩ITmedia]

 2024年4月に民間企業の「障害者雇用率(法定雇用率)」が2.3%から2.5%へ引き上げられる。さらに26年7月からは2.7%に引き上げられることが決定しており、障害者雇用への積極的な取り組みが求められている。

 とはいえ、業務の切り出しに苦戦したり、障害者も働きやすい環境作りに頭を悩ませたりする企業が多いのが現状だ。

民間企業における障害者の雇用状況(厚生労働省 令和5年障害者雇用状況の集計結果より)

 そんな中、DMM.comでは専門部署「ビジネスクリエーション部」(BC部)を立ち上げ、障害者雇用に力を入れている。

 BC部では15年からリモートワークに注目し、障害のある従業員にとって難しい「通勤の困難」を解消。業務の幅も広げ、部署設立から8年目の22年度には初めて黒字化(人件費と販管費を上回る売り上げを上げた状態)を達成した。

 この黒字化を達成するまでには、障害者雇用において解消すべきさまざまな課題があったと、BC部の梶進一部長は話す。

デザイン・サイト運営……障害者雇用の専門部署「BC部」の正体

 BC部は同社の障害者の受け入れ体制を創りあげる専門部署として、15年に設立。BC部には障害のある従業員が65人、業務や勤怠を管理する障害のない従業員が6人、合計71人が所属している。

障がい者雇用率の達成状況(公式Webサイト

 担当する業務はバナーやポスターの制作、Webサイト・ページ更新作業(HTML/CSS)などのデザイン業務、データ入力やメールの1次受付、各種申請業務、アカウント管理業務などさまざまだ。

 業務は基本的にDMMグループ内から部署間取引で受託する。BC部では直近3カ月で空いているリソースを開示し、納期や受託可能な業務の種類などを明記。社内のさまざまな部署から、Slack経由で依頼が来る。BC部の管理者と依頼者で納期や業務内容について打ち合せをしたのち、障害のある従業員に業務を割り振っている。

 管理者は各従業員が抱える案件数、発注残など、全体の業務進捗を管理しているという。

受託業務の一例。デザイナーを雇うなど採用から工夫する(公式Webサイト

 障害者雇用を担当するのは、人事部や総務部などコーポレート関連部署のイメージが強いが、同社はなぜBC部という専門部署を立ち上げたのか

 「14年6月に障害者雇用率の監査が入ったときに、当時は2.0%なければならないところ、当社は0.9%と大幅に不足していました。従業員増員の予定があったものの、障害者雇用の増員計画などは全く動いておらず、まずいぞと、人事・総務を中心にプロジェクト化をしたのがBC部の始まりです」

 プロジェクトを立ち上げたものの、障害者雇用のノウハウがなく苦戦したという。そもそも障害者を雇用するルートも分からない……。「1人の障害者を雇うのに半年ほどかかる状態でした」と梶さんは振り返る。

 「そんな状況下でも『目標数字まであと10人程度雇わなければいけない』となったとき、社長が巻き取りました。地域のネットワークを駆使して人材を探し、助成金の制度を調べるなど取り組むことで、何とか目標の10人雇用を達成。その際に実務を担っていた私が、障害のある従業員の上司の役目を担い、BC部を部署化しました」

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