流浪のクルーズトレイン「THE ROYAL EXPRESS」が静岡、浜松へ JR東海に観光列車の幕が上がる杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/8 ページ)

» 2024年06月15日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

観光列車を持たないJR東海

 JR旅客会社のなかでJR東海だけが、これまでクルーズトレインを経験していない。それは東海道新幹線という「国の背骨」を預かる責任ゆえのことかもしれない。在来線にも投資しているけれども、在来線は生活路線という位置付けだ。観光列車にまで手を出すゆとりがない。

 JR東海が内装まで専用で作った観光列車は過去にあった。国鉄から継承したお座敷客車、欧風客車ユーロライナー、JR東海が発足してからはキハ80系改造のハイデッカー車両「リゾートライナー」、165系電車改造の「ゆうゆう東海」、14系客車を改造した「ユーロピア」などだ。それらはすべて臨時列車や団体列車に使われたけれども、全て2000年までに引退している。

 過去に小田急ロマンスカーと共同運行し、2階建て車両を連結した371系「あさぎり」もあったけれども、2012年に運行を終了。2階建て車両は廃車となり、残った車両は富士急行に譲渡された。

 現在の「観光列車」といえば臨時急行「飯田線秘境駅号」が挙げられるけれども、車両は特急形373系を無改造で使ったから、臨時列車の域を出ていない。

 各地の観光列車がローカル線の活用策として作られた。その経緯を振り返れば、JR東海は観光列車に力を入れる理由がなかったともいえる。観光需要は新幹線と在来線特急が吸収していたからだ。観光要素としては、在来線特急に「ワイドビュー」車両を投入し車窓を楽しむ工夫をするなどにとどまった。

 そもそもJR東海はJR北海道やJR四国のような経営難ではない。それがなぜ、「THE ROYAL EXPRESS」の乗り入れにつながるのか。

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