もともとはJR北海道を応援する企画だったはずが、毎年続く。もはや応援企画というよりビジネスとして成立しているといっていい。どうも東急は上下分離型の観光列車ビジネスをやりたいようだ。そして東急の次の出張は四国だった。2024年1月から3月まで、四国で「THE ROYAL EXPRESS」が運行された。四国・瀬戸内エリアの観光振興・地域活性化を目的としたプロジェクトで、JR北海道と同様の3泊4日のコースで6回行った。
JR西日本とJR四国の電気機関車を交代で使い、「THE ROYAL EXPRESS」の輸送はJR貨物が行う。こちらもJR各社と東急グループの共同プロジェクトだ。現地のバスとフェリーは両備グループが提供した。
ツアーは岡山から始まり、琴平、松山、今治、バスでしまなみ海道を渡り、瀬戸内はフェリーの貸し切り運行で締めくくる。「THE ROYAL EXPRESS」の走行区間はすべて直流電化区間で、自走も可能に思える。しかし実は、JR四国の電化区間はトンネルが小さく、「THE ROYAL EXPRESS」の車高が限界だった。ここでもパンタグラフを撤去する必要があった。そこでJR北海道と同様に電気機関車が牽引し、電源車を連結した。「THE ROYAL EXPRESS」も5両編成だ。定員も減り、なにかと手間のかかる列車である。
JR四国も経営状況は厳しい。しかしJR四国は観光列車のノウハウがある。「伊予灘ものがたり」「四国まんなか千年ものがたり」などの「ものがたりシリーズ」だ。ただし、これらの列車は日帰りツアーが主体で、宿泊を伴うクルーズトレインではない。むしろ旅行会社の宿泊付きツアーに組み込まれる事例が多い。
そんなJR四国にとって、「THE ROYAL EXPRESS」のクルーズツアーから得られる経験は多いだろう。なにしろJR四国は、四国を一周できる路線網を持っている。土佐くろしお鉄道を組み込み、バスで足摺岬や室戸岬を巡れば、さらに大きく四国全体をクルーズできる。クルーズトレインのツアーのように、沿線の宿泊施設や観光施設を取り込んだビジネスを学ぶチャンスだ。
東急にとっては、JR北海道が自前のクルーズトレインを発表したため、次の出張先を確保したいという意図があったと思う。ただし、5月30日の記者発表会で東急の松田高広担当部長に聞くと、「今後も北海道クルーズを継続したい」と語った。JR北海道にしても、複数のクルーズトレインが走ることに異論はないだろう。ビジネスの種は多いほうがいい。
SHIKOKU・SETOUCHI CRUISE TRAINでは、瀬戸内海で列車とバスとクルーズ船の旅を満喫できる(出典:東急、「THE ROYAL EXPRESS 〜SHIKOKU・SETOUCHI CRUISE TRAIN〜」3泊4日の旅行プランが決定)
九州と北海道 2つの高級クルーズ列車は、リピーターを獲得できるのか
年末年始、なぜ「のぞみ」を全席指定にするのか 増収より大切な意味
次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
相鉄・東急「新横浜線」開通で影響する16路線を読み解くCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング