ここまで微細な振動をコンベンショナルなダンパーが吸収できるようになるとは、ちょっと驚きだ。電動車の割合が増えていくなか、振動の発生源が減っていくと、残る振動がより気になっていく。足回りから伝わる振動がここまで減らせるのは、今後大きなアドバンテージとなりそうだ。
それを実現したのは、新開発のピストンバルブとベースバルブにあるらしい。ピストンバルブはオイルの流路を見直して抵抗を軽減しているだけでなく、さまざまな車種やグレードに合わせて特性を調整するために、セッティングの幅を広げられるよう設計変更されている。ベースバルブも同じように油路の形状を変更することで圧力損失を軽減し、減衰力の応答性を高めているそうだ。
最新のCFD(数値化シミュレーション)を使って形状の最適化を図っているのは当然だが、この20年の間にコンベンショナルなピストンは6世代もバージョンアップされている。
ピストンバルブ自体もポートにより減衰力を発生させているから、それを踏まえてシム(薄いワッシャー状のパーツ)を組み合わせて減衰特性を作り上げる。新しいピストンバルブ、ベースバルブは圧力損失を低減、すなわち本体が発生する減衰力を減らして、シムなどの可変部分に減衰力の割合を大きくすることで、より素早く、柔軟な減衰力特性を実現させているようだ。
コンベンショナルな複筒式のダンパーは自動車メーカーへの納入価格が安く、かけられるコストの制約が大きいが、ピストン形状とセッティングで生み出せる乗り味がここまで上質なモノになるなら、選ばれる機会は増えそうだ。
カヤバは独立系の油圧ダンパーメーカーとしては最大規模を誇る企業だけに、生き残るためには切磋琢磨が欠かせないのだ。新型ピストンバルブによる乗り味の変化は、そんなことを思い出させるほど、印象的な出来事だった。
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