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社員研修に「禅」を導入、その効果は? 多くの経営者層が注目するワケ令和の無駄学(1/2 ページ)

» 2024年10月09日 08時30分 公開

連載:令和の無駄学〜僕らにはもっと無駄が必要だ〜

合理的で効率化が求められる社会。どんどん便利になる社会。何不自由なく生きられる社会。しかし、それと逆行するように人々の幸福度は下がっている。

もっと豊かで人間らしい暮らしを得るには、時間的な余白や、一見どうでもいいような機能、生活必需品ではないものの購入など、いうなれば「無駄」が必要なのである。無駄こそ心にゆとりをもたらし、無駄こそ周囲へのやさしさにつながる。真の豊かさを求める上での最強の武器である「無駄」について、社会を解剖していく。

 世の中が加速度的に便利になる中で、効率は良くなったものの面白さが失われてしまった。だからこそ、今の時代には「無駄」が必要なのである! そんな考えのもと始まった本連載。今回テーマとして取り上げるのは「禅」です。

 近年、技術革新やビジネスモデルの変化などに対応するため、新しい知識やスキルを学ぶ「リスキリング」を推進する企業が増えています。デジタルリテラシーやデータサイエンス、言語学習などのリスキリングプログラムが注目を集める中、従業員育成の一環として「禅」を取り入れる会社がじわじわと増えているそうです。

 しかし、一体なぜいま「禅」なのでしょうか?

 一見ビジネススキルとは離れているように思えますが、企業が禅に注目する理由や禅を学ぶことで見込める効果とは、どのようなものなのでしょうか? 今回はこれらの疑問を解明すべく、禅マインドプロデューサーとしてさまざまな企業やビジネスパーソンに禅の教えをレクチャーする島津清彦さんに話を聞いてきました。

社員研修に「禅」を導入する企業が増えているという。そのワケは? 写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

「没入状態」がもたらす効果とは

――なぜ近年、禅を研修の一環として取り入れている企業が増えているのでしょうか?

島津: まず、時代の変化が目まぐるしく、情報が多すぎて、何を拠り所にして生きたらいいのか分からない人が増えている現象がありますよね。特に、企業の中でマネジャーやーリーダーなどのポジションに就いている人は、判断をする立場として人一倍拠り所を求めている傾向があります。そのニーズと、約2500年という長い年月をかけて受け継がれてきた「禅の教え」は非常に相性が良く、自らの拠り所として禅を実践されている経営者層は非常に多いのです。

 禅というのは興味があっても急に始められるものでもないので、企業の研修プログラムとして取り入れたいと考える経営者が増えてきているのです。

――研修では具体的にどんなことを教えているのですか?

島津: 研修では、大きく3つのことを実施しています。1に知識、2に実践、3に知恵です。知識編では、禅の歴史や文化、化学的な効果について学びます。いわば座学ですね。そして次に実際に禅を体験していただきます。そして最後に、これが一番大切なのですが、禅語を用いて言葉の意味を学び、禅を日常生活や職場、ビジネスシーンなどでどのように生かすか、ということをお伝えしています。

――日常生活での禅の生かし方……坐禅を組んでいる時間以外で、どのようなシーンで禅を生かしているのか気になります。

島津: 具体的なシーンというのは人それぞれ異なると思うのですが、禅を生かすというのは、無になる没入状態、いわばゾーン、トランス状態というのを自ら作り出すことができるか否かということなんです。

 例えば、散歩を禅的に生かしている人は、歩きながら没入状態を作り出すことができます。没入しているから、いいアイデアが降ってきたりひらめきが生まれたりするわけです。一方、頭の中の思考が暴れている場合は、あっちこっちに意識が散乱し、リラックスするために散歩をしていても結局頭の中はタスクに追われてしまうのです。

 マルチタスクを抱える現代人にとって、没入する時間というのは、意識しないと作り出すのが難しく、禅はその訓練に最適な手段というわけですね。

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