ただ、実は経産省のエリートたちが「ホンハイ買収阻止」を応援しているのは、「対中国」だけではない。日産を奪われてしまうと、日本はある分野での戦いで、「惨敗」を喫する恐れがあるからだ。
その分野とは「パワー半導体」だ。
「産業のコメ」といわれる半導体の中でも、ロボットやドローン、EVなどになくてはならないパワー半導体はこれから急成長確実な分野で、世界はここの覇権を握るために熾烈(しれつ)な争いをしている。
英国の調査会社オムディアによると、2023年におけるパワー半導体の世界シェア1位はドイツのインフィニオン・テクノロジーズ(Infineon Technologies)、2位が米国のオン・セミコンダクター(ON Semiconductor)、3位がスイスのSTマイクロエレクトロニクス(STMicroelectronics)である。
中でも特筆すべきは「パワー半導体の巨人」と呼ばれるインフィニオン・テクノロジーズだ。2位のオン・セミコンダクターの2倍以上となる圧倒的なシェアを誇っており、世界各国の自動車メーカーにパワー半導体やチップを供給している。2024年2月にはホンダとも戦略提携を締結した。
われらが「日の丸半導体」はどうかというと、4位に三菱電機、5位に富士電機、8位にローム、9位に東芝となっている。
「トップ10の中に4社も入っているなんて、スゴいじゃないか」と思うかもしれないが、なかなか微妙なのはこの4社を全てまとめても、1位のインフィニオン・テクノロジーズのシェアに届かない。「巨人」の背中さえ見えない状況なのだ。
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