なぜ百貨店は正月に休むのか 「人手不足」説に隠れた各社の真意(5/5 ページ)

» 2024年12月27日 08時00分 公開
[谷頭和希ITmedia]
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これからの元日はどうなる?

 富裕層やインバウンドへの集中戦略を進めている百貨店にとって、元日休業は自然な成り行きといえる。その意味では、百貨店の元日休業が増えるからといって、これからの日本の働き方や雇用のあり方が大きく変わる、とはまったく思えない。

 2025年も元日からいつも通りショッピングモールは開いているし、多くのスーパーも営業している。ライフやサミットといったスーパーが休業していることから、他のスーパーやコンビニもこの流れに追随するかもしれないが、「元日でも何でも手に入る」便利さを知った消費者が、それをやすやすと受け入れるとは考えにくい。

 もし、多くの店舗が休業したとしても、元日営業をしている店舗に人が集中し、結局他の店舗もまた元日に営業を開始する……なんて流れも想像できる。2025年以降も、元日のありようは変わらないのではないか、というのが筆者の見解である。

 今回のニュースを見て改めて思ったのは、いまだにわれわれの意識の中では「百貨店が商業の中心」かのような錯覚があるということだ。本稿で書いた通り、今回の休業は明らかに百貨店固有の事情によるもので、日本の商業全体の流れとはほぼ関係ない。にもかかわらず、「日本の労働環境」とか「日本の商業のあり方」といった大きな主語の話に展開する論調もある。

hyaku 「百貨店が商業の中心」かのような錯覚(提供:ゲッティイメージズ)

 百貨店が都心を中心とした大都市で隆盛を誇っていることもあって、同じく大都市に集中しているメディアが、百貨店を主語に日本の商業を語る傾向にあるのかもしれない。こうした「都心・百貨店中心史観」の根強さを感じた次第でもある。

著者プロフィール

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谷頭和希(たにがしら かずき)

都市ジャーナリスト・チェーンストア研究家。チェーンストアやテーマパーク、都市再開発などの「現在の都市」をテーマとした記事・取材などを精力的に行う。「いま」からのアプローチだけでなく、「むかし」も踏まえた都市の考察・批評に定評がある。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』他。現在、東洋経済オンラインや現代ビジネスなど、さまざまなメディア・雑誌にて記事・取材を手掛ける。講演やメディア露出も多く、メディア出演に「めざまし8」(フジテレビ)や「Abema Prime」(Abema TV)、「STEP ONE」(J-WAVE)がある。また、文芸評論家の三宅香帆とのポッドキャスト「こんな本、どうですか?」はMBSラジオポッドキャストにて配信されている。


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