皆さんは「サントメ・プリンシペ共和国」という国名を聞いたことがあるだろうか。失礼ながら、筆者はこの万博で初めて知った。
サントメ・プリンシペはアフリカ大陸のちょうど赤道付近、西側にぽつんと浮かぶ島国。サントメ島とプリンシペ島、そしてその周辺の小島から成り立っている。多くの人にとって聞きなじみのない国だと思うが、実は“アフリカで初めてカカオが植えられた国”とされているそうだ。
そんなカカオを使って作られたクッキーを、名古屋市にある「カフェタナカ」が、サントメ・プリンシペと共同出展したパビリオン内で不定期で販売している。
サントメ・プリンシペは島国であるため、他の種類のカカオとの交配が進まず、良い意味で“取り残された”状態になっているという。だからこそ、ほぼ原種に近いカカオが今も多く残っているそうだ。交配が進んだ他地域のカカオとの違いは、「原種らしい力強さを残しつつ、木やフルーツのような芳醇な香りが際立っていること」だと、広報の横山麻子さんは話す。実際筆者もクッキーを試食してみたが、確かに力強いコクと香りを感じた。
しかし、こうした貴重なカカオの原種が、危機にさらされているという。「カカオの2050年問題」と呼ばれ、気候変動などの影響により、2050年までに現在のようなカカオ栽培が困難になり、チョコレートが今のように気軽に手に入りにくくなるかもしれないというのだ。
もちろん、サントメ・プリンシペも例外ではない。カフェタナカでは、現地の人々と協力しながら、カカオ畑の再生活動を行っている。また、貧困率が高い同国において、少しでも所得向上につながるよう、現地の女性たちにカカオを使ったお菓子作りを教え、収入を得る手段を増やす取り組みもしているという。
横山さんは「サントメ・プリンシペのカカオを通じて、国のことを知っていただきたい。そして、カカオが今後採れなくなるかもしれないという“2050年問題”についても、少しでも理解を深めるきっかけになればうれしい」と話していた。
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