世界最大のモバイル技術見本市「MWC(モバイル・ワールド・コングレス)2026」が3月初め、スペインのバルセロナで開かれた。米国とイスラエルによるイラン攻撃を受け、来場者数が2025年よりわずかに減ったものの、世界から約2900社・団体が出展。10万人以上が会場を訪れた。
最大の出展企業は例年通り、中国通信機器最大手のHuawei(華為技術/ファーウェイ)で、傍系端末メーカーのHONOR(オナー)を合わせた展示面積は全体の1割にも上った。ただ今回はNTTが7年ぶりにグループで共同出展し、島田明社長がNTTトップとして初めてMWCで基調講演する一方、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長も基調講演するなど日本勢の躍進が目立った見本市だった。現地レポートをお届けする。
「IT市場はこれからの10年で20倍、生成AIは最大で40倍にも拡大する。それを支えるには多くのデータセンターと電力が必要だ。われわれはフォトニクス(光技術)で消費電力を劇的に抑えるソリューションを提供していく」
基調講演に立ったNTT島田社長は「Photonics Unlocks an Intelligent, Power-Optimized Future」(光技術が拓く知的で電力が最適化された未来)と題し、光電融合デバイスの商用化や光量子コンピュータの実用化に向けたNTTの技術戦略を披露した。
光技術の導入ではNTTなどが推す次世代光通信技術の「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network)を紹介し、大量の電力を消費する電気信号を、光信号に置き換えていくと説明。米通信半導体大手のBroadcom(ブロードコム)や、台湾の通信機器メーカーであるAccton Technology(アクトン・テクノロジー)と組んで、サーバ内の回路基板まで光通信で結ぶIOWNの第2フェーズを実現したことを明らかにした。
今後は半導体内部まで光信号でつなぎ「2032年には電力消費効率を現在の100倍に高められる」という。
島田社長は量子コンピュータの分野でも「フォトニクスを使った光量子コンピュータの実現を急ぐ」と表明した。量子コンピュータにはさまざまな方式があり、現在は米IBMや富士通、理化学研究所などが進めている超電導方式が主流だ。しかし極めて低い温度や真空といった特殊な状態をつくるには「拡張性や電力消費効率の面で課題がある」と指摘。「光量子コンピュータなら常温、常圧で動作し、スケーラビリティ(拡張性)に優れている」「2030年には100万量子ビット、将来的には1億量子ビットを実現できる」と話した。
日本企業からもう1人、基調講演を務めた楽天の三木谷会長兼社長は、グループ会社の楽天シンフォニーを通じ、ドイツの新興通信事業者である1&1(ワン・アンド・ワン)など70社以上の通信事業者に、同社の携帯通信システムの仮想化技術を提供していることを明かした。
さらに「米通信衛星ベンチャーのAST SpaceMobile(ASTスペースモバイル)と組んで、2026年後半にもスマートフォンに直接つながる衛星携帯通信サービスを始める」と発表した。
携帯端末向けの衛星通信サービスは米宇宙開発ベンチャーのSpaceX(スペースX)が「Starlink Mobile」(スターリンク・モバイル)を提供し、日本でもすでにKDDIが「au Starlink Direct」のブランドでサービスを始めている。通信衛星と携帯端末を直接つなぐため、Starlink(スターリンク)はまずメッセージ送受信(SMS)からスタートしたが、ASTの通信衛星はテニスコート大の巨大なアンテナを利用することにより「最初からビデオ通話や動画視聴などに対応できる」という。
日本の通信大手3社に比べると、後発の楽天モバイルは国内の携帯基地局の整備が十分でないものの、三木谷会長兼社長は「ASTを使えば、一気に通信エリアを100%にできる」と意気込む。
三木谷会長兼社長はまた「楽天経済圏」を英語で「Rakuten Ecosystem」と呼び、同社が展開するポイントサービスや映像配信サービスの「Rakuten TV」、メッセージサービスの「Viber」(バイバー)など、通信以外のさまざまな情報サービスを海外の通信事業者にも提供していくと発表した。
海外の通信事業者は第5世代通信規格「5G」に多額の投資をしてきたものの、なかなかARPU(アープ=利用者一人当たり平均売上高)の向上につながらず、経営が厳しくなっている。楽天が展開するさまざまなサービスの仕組みを活用すれば「通信事業者の売上高拡大にもつながる」(三木谷会長兼社長)というわけだ。
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