中国での需要減退に加え、サプライサイドからも逆風が吹いている。トランプ政権下で強化された関税だ。
ナイキの粗利益率は前年同期の41.5%から40.2%へと1.3ポイント低下した。このうち約2.5ポイント分が北米における関税引き上げの直撃によるものだ。
ナイキのシューズ生産はベトナムが約半数を占め、中国、インドネシアにも大きく依存する。米政府がベトナムからの輸入品にも追加関税を検討する中、生産拠点の分散だけでは関税リスクを回避しきれない構造だ。
米ドル高も見逃せない。ナイキは売上高の半分以上を北米以外の地域で稼ぐグローバル企業である。ドル高局面では、海外で計上した現地通貨建ての売り上げがドル換算で目減りする。
海外売上比率が高いナイキのような企業にとって、為替は関税と同様にコントロール不能な外部要因であり、経営努力だけでは吸収しきれない構造的な逆風となっている。
ルンバのアイロボットも、ドル高局面で海外事業の採算が悪化したことが経営を圧迫した一因だった。米国に本社を置きながら成長を海外に依存するビジネスモデルは、ドル高環境下では本質的に脆い。ナイキは規模こそ段違いに大きいが、その構造的な脆弱性は同根だ。
もちろん、ただちにナイキがアイロボットのように破産に追い込まれる可能性は極めて低い。しかし「中国市場で稼ぐ」という成長ストーリーが崩れつつあることは、投資家にとって看過できないリスクだ。
ナイキのロゴがもたらす文化的影響力、世界中のトップアスリートとの契約網、そして年間500億ドル規模の売り上げを支えるグローバルサプライチェーンは、新興勢力が一朝一夕に追いつけるものではない。
しかし、イノベーションの停滞、新興・中国勢力の台頭、そしてドル高と関税という外部環境の悪化がアイロボットと重なる。ナイキは負の連鎖を断ち切れるのか、注目したい。
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