米ブラックロック、コメダHDを「買い」と見たワケ AI全盛に逆行する真意とは古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(4/4 ページ)

» 2026年04月15日 08時00分 公開
[古田拓也ITmedia]
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日本の「食」が持つ海外展開の可能性

 4月8日に発表されたコメダHDの2026年2月期の本決算は、この構造の強さを裏付けるものだった。売上収益は572億2500万円(前期比21.6%増)、営業利益は94億2400万円(同6.8%増)、純利益は64億6100万円(同11.1%増)。純利益は2期連続で過去最高を更新し、売り上げは6期連続の増収となる見込みだ。

 売り上げの急伸には、2025年3月にシンガポールのカフェ・タイ料理チェーン「POON」の株式の70%を取得した効果が含まれている。日本国内で見えてきた出店余地の天井を、海外で突破しようとしているのだ。

 これもブラックロックが「今」コメダHDに投資した理由だ。日本の「食」が持つ海外展開の潜在力を評価しているのである。

 寿司、ラーメン、焼肉などの日本発チェーンが海外で展開されることは珍しくなくなった。その根底には、素材へのこだわり、品質管理のきめ細かさ、サービスの水準の高さといった「日本品質」への評価がある。

 コメダHDは台湾や上海ですでに出店実績を持ち、2023年にはインドネシアにも進出。中期経営計画では海外80店舗を目標に掲げている。

 今回のPOONの買収は、単なる店舗数の積み増しではない。シンガポールという東南アジアのハブとも言える場所で、既存の30店舗のインフラと、現地オペレーションのノウハウを同時に手に入れる狙いもある。また、POONを足がかりに、マレーシア、タイ、ベトナムへと「食品製造プラットフォーム」を横展開する絵も描ける。

海外事業のさらなる展開も目指す(出典:コメダHDの決算説明資料)

 ブラックロックが大量保有報告書を提出したのも、POONの統合進捗が見える買収完了からちょうど1年のタイミングだ。これは偶然にしてはタイミングが良すぎる。

 もちろんリスクはある。コメダHDが採用する定額ロイヤルティーモデルはFC加盟店に優しい反面、本部の取り分が売り上げに連動しにくい面もある。そのため、商品研究に投じる開発費が、スターバックスなどの巨大企業よりも少なくなってしまい、商品力で劣後する可能性もある。

 ただ、そうしたリスクがある中でも、世界最大の資産運用会社がコメダHDに賭けたという事実は大きい。今回提出された大量保有報告書の内訳を分解すると、そこには上場投資信託(ETF)の機械的な買い以上の「意思」が読み取れる。AIが世界を変える時代だからこそ、AIに壊されない「衣食住」の実需に、資金が向かっているのかもしれない。

 「ミクロがマクロを動かす」を掲げるブラックロックがコメダHD株の大量保有に踏み切ったのは、マクロ経済が揺らぐ時代における当然の流れともいえる。コメダHDのミクロな競争優位性が、確実なリターンを生むためのマクロ投資戦略となるのか。今後の動向を、引き続き注視していきたい。

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