井村屋フードサービスの社内では、閉店が決まった当初から「We shall return(必ず戻ってくる)」を合言葉に、再出店に向けたコンセプトの見直しと出店候補地の選定を続けていた。条件として定めたのは、情報発信の拠点になり得ること、曜日や時間帯による来客の波が小さいこと、エリア自体に活気があることだった。
神宮外苑の再開発が進む南青山はその条件を満たし、日本における同ブランド発祥の地でもあった。「条件に合うよいロケーションの出店候補が見つかったことが決め手だった」と井村屋フードサービスのアドバイザーの鼎正教(かなえ・まさのり)氏は振り返る。
復活までの間、年に3〜4回のポップアップショップを通じて、客の声に触れる機会は続いていた。品川駅や横浜高島屋で催事を行えば長蛇の列ができ、再出店を望む声は高まっていた。
なぜ、3年半たっても熱量は薄れなかったのか。一つには、代わりがいないという事情がある。スクラッチメイドのアメリカンパイをフルサービスで提供する業態は、国内にほぼ存在しない。
加えて、閉店がかえって希少性を高め、オンラインや催事での限定的な接点がブランドへの愛着を維持した面もある。客が覚えているのは、パイの味だけではない。制服、接客、店の空気を含めた「体験の記憶」がファンをつなぎとめていた。
こうした手応えを受けて、社内ではまず駅近の小型店を検討した。催事ではクリームパイを求める声が特に多く、ベーカリーを併設したテークアウト型のパイショップであれば需要に合うほか、物件を確保しやすく、投資リスクも抑えられる。
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