よく言われるのは「ハードな割に給料が安い」という話だ。ハイデイ日高は「分かち合う資本主義」と呼ばれるような待遇の良さが特徴で、新卒初任給は28万円に引き上げられている。しかし、それでも日本経済新聞の会社情報を見ると平均年収523万円で、コメダHD(1075万円)、トリドールHD(812万円)、すかいらーくHD(734万円)とは大きな開きがある。
そして、今の若者が離職する最大の理由といわれる「成長が実感できない」というのも耳の痛いところでもある。日高屋は465店舗で、全て同じ味とサービスを提供するために、埼玉県行田市のセントラルキッチンで食材の加工・調理を一括して行い、それを各店舗に配送している。現場での配膳など、あらゆる業務が細かくマニュアル化されている。これを研修で叩き込まれる。
このような完成されたシステムによって均一な味が楽しめるのは、消費者にとってはありがたい話だ。しかし、外食の世界で「成長」して、いずれ大きく羽ばたきたい志を持つ新卒の若者たちからすれば、ちょっと物足りなく感じるのは言うまでもない。
日高屋でキャリアを積んで店長になっても、セントラルキッチン方式のため、調理の専門性は身につきにくい。店舗運営も、あくまで日高屋のマニュアルに沿った実践なので、転職先や独立した際には応用しづらい。
日高屋は業績や店舗数が右肩上がりで増えている「成長企業」であり、その原動力は「徹底した業務の標準化」である。もちろん、それはそれで立派なビジネスモデルではあるのだが、その中でマニュアル順守する人が自身の「成長」を実感できるのかというと、それはまた別の話だ。企業の成長と社員の成長は、必ずしもイコールではないのだ。
もし何かのきっかけで「なぜ日本の外食チェーンには若者が定着しないのか」という議論が盛り上がってしまうと、このような耳の痛い話が山ほど出てきて収拾がつかなくなってしまう。言うなれば、「パンドラの箱」を開けてしまうようなものだ。
だから、日高屋の謝罪文ではそういうリスクを一切排除した。「ゼロ回答」で世間から叩かれたとしても、競合他社と比べた待遇や労働環境、マニュアル文化についてあれこれ詮索されるよりもマシだと判断したのである。
富士そば「外国人観光客お断り」は悪なのか 立ち食いそば騒動が問いかけた現実
丸亀製麺は“讃岐うどん”の看板を下ろしたほうがいい、これだけの理由
「男女混合フロア」のあるカプセルホテルが、稼働率90%の理由
「廃虚アウトレット」の乱立、なぜ起こる? 絶好調なモールの裏で、二極化が進むワケ
「イオンモール」10年後はどうなる? 空き店舗が増える中で、気になる「3つ」の新モールCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング