高品質な豆やバリスタ技術だけで、サザコーヒーは現在のような人気を得られたわけではない。コーヒー業界では、味や空間へのこだわりを打ち出す店は珍しくない。その中でサザコーヒーは、イベントや商品開発も含め、飲食や空間を体験として楽しんでもらう工夫を重ねてきた。
例えば、コロナ禍の2020年11月、東京駅前の商業施設KITTE内のサザコーヒー直営店では“ゲイシャ豆の新着祝い”としてパナマの駐日大使と新橋の芸者衆を招いたイベントを開催した。ゲイシャの名前の由来は、発祥地であるエチオピアの「ゲイシャ村」だ。しかし、日本語では“芸者”を連想させることから、イベントではあえて新橋の芸者衆を招き、「誤解を深める」と称した。
2021年1月には茨城県内の店で「レインボーミルクレープ」を発売。毎日コロナ感染者数が発表された憂鬱(ゆううつ)な時期に、「気分が明るくなるような華やかなスイーツを届けたい」という思いからだった。現在もSNSでたびたび話題になっている。
コーヒーだけでなく、自前でパンやスイーツもつくる。名物の「カステラショートケーキ」は、長崎カステラを参考に自社開発した。近年は自家製パン(サザぱん)や自家製アイスクリームも手掛けるようになった。
「ブラジルの『パダリア』(Padaria)を意識しています。パダリアは、パンを軸に、コーヒーや軽食も提供する、ブラジルでは一般的な街のベーカリーカフェです。筑波大学に出店した店で最初に『ポンデケージョ』(チーズパン)を販売した時も、それを意識していました」
太郎氏は、こうした独自の取り組みを“変さ値(へんさち)経営”と呼ぶ。学力などの均一指標である「偏差値」に対抗し、他社には真似できない独自の「尖った変さ(個性・独自性)」を突き詰めて付加価値を高める意味だという。奇をてらうことが目的ではなく、カフェ体験そのものを拡張する発想だ。
コーヒーの味に加え、こうした姿勢が消費者に支持されて業績は拡大。現在の年商は2社(喫茶業のサザコーヒー、コーヒー豆のサザコーヒーロースター)合わせて約25億円に上る。
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