なぜイオンは“標準的なスーパー”を増やすのか 「食品インフラ争奪戦」で始まる大淘汰小売・流通アナリストの視点(4/5 ページ)

» 2026年06月01日 08時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

イオンが狙う食品小売の再編

 実は、イオンをはじめとする大手スーパーは、すでに集中センターの整備を進めてきている。店舗で行っていた作業の前工程の一部を、集中センターで処理する体制へと移行。消費者がその変化を受け入れるかどうかを検証する段階に入っているのである。

 そして、「センター供給でも消費者は買ってくれる」ということを証明したのが、イオンのまいばすけっと(以下、まいばす)である。

 コンビニの居抜き出店で知られるまいばすには、店内で加工作業を行うバックヤードがない。商品はセンターから供給され、店舗では基本的に並べるだけで良い。

店舗数を増やしているまいばす(出典:まいばすけっとの公式Webサイト)

 この仕組みによって、2024年度のまいばすは店舗数1200店以上、売上高2900億円超にまで成長した。現在では、イオンの中でも最も成長力のあるスーパーとなっている。

 センター供給型のスーパーが消費者に受け入れられることを確認したイオンは、今後、食品インフラを軸にスーパー事業を転換していこうとしている。狙いは、規模の利益を働かせ、市場でのシェアを高めることにある。

 この動きは、スーパー市場の寡占化が一気に進む可能性を示している。コンビニやドラッグストアなど、他業態ではすでに上位企業への集約が進んできた。スーパーでも同じことが起きる可能性がある。

 仮に食品小売市場の2割のシェアが動くとすれば、50兆円市場のうち10兆円相当が再編対象となる。これは、国内小売市場では二度と起きないかもしれないほど大きなシェア変動である。

 イオンがこの再編で覇権を握れるかどうかは、センター供給を軸にした食品インフラ戦略の成否にかかっているのである。

 今回の中計に戻ると、イオンのメインシナリオは明確である。

 再編が見込まれる10兆円市場を最大限取り込むために、現在の事業基盤が生み出すキャッシュフローの1割以上を食品インフラに投じる。そして、スーパーをセンター供給型へと転換していく。その上で、食品インフラの強さと、国内最大規模のPBによる価格競争力を武器に、一気にシェアを奪おうという考え方である。

 この転換に成功すれば、イオンは最も損益分岐点の低いスーパーを実現できる。今後、国内市場が縮小していく中でも、最後まで生き残れる存在になっていくだろう。

 イオンにとって今後10年は、スーパーやドラッグストアという生活必需品市場における最終決戦の時である。今回の中計は、その前半5年の戦い方を示したものだと言えるだろう。

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