ここが誤解されやすいポイントなのだが、心理的安全性が高い組織は単に雰囲気が和やかなわけではない。「健全な衝突」が日常的に起きている。
部下からは、
「その方向性には異論があります」
「数字の根拠を、もう一度教えてください」
「部長の判断は正しいと思いますが、現場の実態とズレがあります」
上司からは、
「その姿勢はおかしい。今期の部門方針と異なるよ」
「キチンと報告をしなさい。どのタイミングで報告すべきかは、伝えているはずだ」
「このデータ入力は毎日やってほしい。そうでないと集計ができない」
こういったお互いの発言、問題提起が、上下関係を問わず普通に出てくる。多少のストレスがあったとしても、それでも議論を前に進めようとする。それが心理的安全性の高い状態だ。
一方(3)の「上司は言えない・部下は言える」という状態は危険だ。部下が自由に意見を言えるいっぽうで、上司が言うべきことを言えない。
提出期限を守らない、安全対策の手順に従わない、新人に対する口のきき方がキツすぎる、そんな部下がいても、見て見ぬふりをする――。
こんな上司ばかりではモラルハザードを招く。組織の規律が失われていき、真面目にやっているメンバーが報われない風土が定着するだろう。
真に機能する組織とは、上も下も、言うべきことを言える組織だ。そのためには、マネジャー自身が「健全な衝突」を恐れない姿勢を示すことが不可欠だ。
最近「ホワイトハラスメント」という言葉が注目されている。上司の過剰な配慮が、結果的に部下の成長を妨げる行為のことだ。
「先輩が先回りして全部やってしまう」
「定時になったら帰れと毎日促される」
「責任ある仕事を任せてもらえない」
マイナビの「新入社員の意識調査2023」によると、中途入社1年以内の13.6%がホワイトハラスメントを経験しており、経験者の71.4%が転職を検討している。
マイナビの調査によると「ゆるい職場だ」と感じる新入社員は57.4%に上る。ハラスメントを恐れるあまり、上司が言うべきことを言わなくなった結果、若手が「ここでは成長できない」と判断して離れていく。
これは「上司が言えない」という(3)か(4)の状態だ。優しすぎる組織が、優秀な若手を失っているという、皮肉な現実がうかがえる。
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