このように今も生き残って、多くの人でにぎわう書店を見れば一目瞭然だが、「出版取次から届いた本を並べて売る」というビジネスモデルは、もうとっくに終わっているのだ。
では、これからの本屋は何で稼ぐのかというと「出会いの場」の提供だ。
例えば、ブックラウンジのようなリラックスできる空間で、これまで読んだことのない本と出会い、感性や思考に刺激を受ける、美術館や博物館のような文化体験ができる場所だ。また、「ウィー東城店」のように「地域の困りごと、足りないもの」の解決策を提供したり、「ここに来れば何か楽しいことがある」というワクワク感を提供したりというのも「出会い」の提供だ。
どういう業態にせよ、このような「出会いの場」へと変化できた書店は生き残っていく。逆に、POSデータを基に売れる本や雑誌を分析して、新聞書評で話題になったベストセラーばかりを並べて、「本を売る」ことに特化した書店は消えていく。それはAmazonのベストセラーランキングをチェックして、ネットやSNSで口コミを精査してポチれば事足りるからだ。スマホで体験できることを、わざわざリアル書店に足を運んでやろうという人は少ない。
しかし、多くの書店はまだ「本を売る」ことを第一に考えている。大手コンビニのようにPOSデータを分析して、顧客のニーズを読んで「売れる本」を並べて「死に筋」を排除する、という過酷な戦いから抜け出すことができない。
筆者が7年前、コンビニの書店強化によって「書店が生き残るための強み」が失われると警鐘を鳴らした理由も、ここにある。
書店が取次の配送を受けて「本を並べる空間」にしかなっていないので、「本好き」ではない人が時間つぶしに訪れて、フラフラするうちにこれまで読んだこともないような本と運命的に出会うなんて「体験」もないのだ。
日本の書店が生き残るには、「本を並べる空間」から、「知的好奇心を刺激する心地よい空間」へと変わっていかなくてはいけないのである。
そんな中で、ゴリゴリのマーケティングを駆使するコンビニによる、本と読者を結び付ける仕組みが強化されたら、「知的好奇心を刺激する心地よい空間」なんてヌルい話はどこかにスコーンと飛んでいってしまうのは間違いない(ITmedia ビジネスオンライン 2019年11月26日)
実際、その懸念は現実のものとなった。海外の書店では「本を介した体験を売る」という発想が古くから根付いていた。英国の大手書店「ウォーターストーンズ(Waterstones)」の経営者ジェームズ・ドーント氏も2019年のインタビューで「最も重要なのは書店に来る喜びを顧客に提供することで、本を売るのはその次」と断言している。
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