AFSがAIエージェント導入の先陣を切れた理由は、長年かけて進めてきた業務標準化にあった。
同社の源流は、1988年に営業支社ごとに異なっていた経理処理を統合するセンターを、味の素の社内に設けたことにある。その後、1998年に工場経理を一拠点へ、2001年に営業・工場・研究所の経理をまとめる経理サービスセンターへと集約を広げた。そして2020年、AFSとして独立した。
標準化・効率化は、代表取締役社長である高木泰氏が推進する「やへか」(やめる、減らす、変える)の考えのもと、現在さらに加速している。
「何をやめ、何を変え、何を減らすのか。それを判断するには『いま、どのような業務をしているのか』という業務の整理整頓が欠かせません。そのため、業務内容やフローの可視化をセットで進めてきました」
AIエージェントの導入を主導した、経営企画部 DXOE推進グループ長の木田啓太氏はこのように振り返る。
この「整理整頓」や「可視化」は、今回の経理AIエージェント開発にも大きく貢献した。先述の通り、経理業務は、簿記をはじめとする専門知識に加え、各社の社内規定に基づく判断が必要になる。そのため、社内規定やマニュアルが整備されていない場合、それらを整えるところからのスタートとなる。
「AFSでは、社内ルールが整備されていて規定やマニュアルの明文化も進んでいました。そこに、当社が培ってきたAIの知識を掛け合わせることで、プロジェクトのキックオフから約5カ月という短い期間で開発を進められました」とファーストアカウンティング 代表取締役社長の森啓太郎氏は話す。
社内ルールが整備されていたとはいえ、開発が順調だったわけではない。規定やマニュアルがあったとしても、担当者のコミュニケーションの中から生まれる、言語化されていない暗黙知は存在するものだ。
どこまでをシステムで作り込み、どこから人の作業として残すか。マニュアル通りにいかないイレギュラーへの対応をどのように線引きするかなどを定める必要があった。
こうしたルールを定める場合、現場の協力が不可欠だ。しかし、AFSでは、AIエージェントで自動化する経費精算の承認業務をBPO(Business Process Outsourcing)に委託していた。そのため、AFS社内だけではなく、BPOの協力を仰ぐ必要があった。
BPOの視点で考えると、自分たちの仕事がAIに代替され、業務がなくなるのではないかという懸念もあるだろう。それにもかかわらず協力を得られた背景には、同社がこれまでの対話で構築してきた信頼関係があった。
「これまでのコミュニケーションの中でも、私たちが『やめる、減らす、変える』を重視していることはBPOの責任者・担当者にも伝えてきました。また、今回のAIエージェント導入の目的はコスト削減や人員削減ではありません。より付加価値の高い業務を担ってもらうための余力を生み出すことです。そのため、経費精算の承認業務をAIが実施する分、新たな業務をお願いしたいと繰り返し説明しました」(木田氏)
業務効率化によって作業量が減っても、必ず次の新しい業務を依頼する。そうした約束と実績により、長年にわたって実直に積み重ねてきた信頼が、BPOの協力を得ることにつながった。
週1回の会議にはBPOのリーダーも加わることで、実際の現場の意見を踏まえながら、暗黙知の形式知化を進めていったという。
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