斎藤氏は、変化の要因として3つを挙げる。1つめは、VUCA(※)と呼ばれる、先行きが見通しにくい時代の到来だ。会社が一生雇用を守ってくれるという期待は薄れ、市場で通用するスキルこそが安定につながると考える人が増えた。
(※)Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った略称。
2つめは、人生100年時代の到来だ。働く年数が長期化し、健康を維持しながら働き続けられる環境の重要性が増した。3つめは、AI時代の到来だ。人間ならではの価値は、豊かで健康な生活があってこそ生み出せるという認識が広がっている。
こうした変化に対して、企業側も制度設計や福利厚生の拡充といった対策を進めてきた。だが、調査からは意外な傾向が見えてくる。
ワークライフバランスを向上させる責任は誰にあるかを尋ねたところ、「会社」と回答した人は約30%にとどまり、約70%が「自分にも責任がある」と答えた。多くの働き手は、会社任せにするのではなく、自ら働き方を選び取っていくという意識を持っている。
ただし、それを実現するには職場の土台が必要だ。斎藤氏によると、制度が整っていても、心理的安全性が低い職場では、十分な満足を得ることは難しいという。土台のない職場では、自分でバランスを取ることは難しい。「ワークライフバランスの欠如」が退職理由の上位に挙がるのは、その裏返しといえる。
制度を整えることと、働き手が自分の裁量でバランスを取れることは、必ずしも一致しない。働き手が求めているのは、制度の多さではなく、自分で仕事や働き方を調整できる裁量だ。
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