一方で、このような新しい葬送文化の普及には大きな壁が立ちはだかっているのも事実だ。「つなぐ葬儀社 襷―TASUKI―」という屋号で「ご家族に寄り添う」ことを何よりも大切にしている葬儀社・フラットセントラル(東京都新宿区)の平中康介社長はこう述べる。
「夕刻葬という新たな選択肢ができることで、ご家族の希望に沿った選択肢が増えることは、良いことだと思います。でも、難しいのは、私たち葬儀社側として、喪主さまなどに対して『夕刻葬はいかがですか』などとご提案できないことです。葬儀社というのは、利用される方が『このような形でお別れをしたい』という希望に寄り添い、できる限り実現するために手配をする仕事ですから」
一般的なサービス業では、新サービスがローンチすると現場ではいわゆる「売り込み」が行われるのが普通だ。メリットや費用面の利点を伝えて、契約につなげる。そのように利用者が増えていくことで、消費者の間で新サービスの認知も広がり、普及していくという流れだ。
しかし、葬儀はそうではない。メリットやコスパなどよりも、「悲しみの中にいるご遺族」が経済的・時間的な制約の中で、こういうお別れをしたいという意向が何より優先される。葬儀社側が「こういうお葬式がおすすめです」と積極的に勧めるようなものではないのだ。
「うちで夕刻葬をご利用いただいた方は、正直なところ“たまたま”だったんです。ご希望の時間帯はどこも予約で埋まっていて、困っていらっしゃったので、『でしたら夕方からの葬儀もできますよ』とご提案をさせていただいたところ、だったらこれにしようとなったんです」(平中社長)
夕刻葬が斎場運営会社や葬儀会社、そして利用者にとってもメリットの多い「三方良し」のサービスであったとしても、「売り込みができない」という性格上、普及には時間がかかるのではないか――。そんなネガティブな意見も葬儀業界からは聞こえてくるのだ。
「中国人観光客が原因」は誤解だった? 京都を苦しめる“観光集中”の正体
富士そば「外国人観光客お断り」は悪なのか 立ち食いそば騒動が問いかけた現実
焼肉店はなぜ急に苦しくなった? ロピアの急成長で見えてきた「新たな競合」
なぜ「性善説」は機能しないのか セルフレジ、リモートワーク、消費減税の共通点Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング