ただ、帝都典礼の市村取締役はそれほど悲観していない。確かに、葬儀というのは葬儀社側があれこれと提案できるものではないので、新しい形式を意図的に広めることは難しい。一方で、利用者の間で認知が広がれば、葬儀社側が何もしなくても一気に普及していくこともあるからだ。
「その最たるものが“直葬”です。これはもともと葬儀社側が普及させようと思ったものではありません」
葬儀相談・依頼サイト『いい葬儀』を運営する鎌倉新書が2026年3月に実施した「第7回お葬式に関する全国調査」によれば、「直葬・火葬式」を行った割合は10.8%で、2018年の4.9%から2倍以上となっている。
これはどこかの葬儀社が「夕刻葬」のようにプロモーションをかけた結果ではなく、「マスコミ報道」によるものだ。
「そもそも“直葬”という言葉は、一般にはあまり知られておらず、主に葬儀業界の中で使われていたものでした。本来は、経済的な事情で葬儀費用を用意することが難しい方や、身寄りのない方のために選ばれるケースが中心でした。ところが、テレビや新聞などで直葬が取り上げられるようになると、その存在が広く知られるようになったのです。その結果、『直葬という形式があると聞いたのですが、そちらでも対応できますか』といった問い合わせが、葬儀社に寄せられるようになったのです」(帝都典礼・市村取締役)
葬儀は「悲しみに暮れるご遺族」の意向が何より優先されるため、「直葬がやりたい」と望めば葬儀社側としては断ることはできない。こうして、もともとは業界内でしか知られていなかった「特別な事情がある人向けの葬儀」が、全体の約1割を占める「新たな葬儀の形式」として普及していったというわけだ。
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