ポータルサイトを開発する上で、特に重視しているのが使い勝手の良さだ。
「NetSuiteの画面を見るにもスキルが必要です。製造部門の人が更新すべきデータは限られているのに、商品マスターを開くと多数のフィールド(データ入力欄)が出てきて大変になってしまう。NetSuiteを開かずにデータが見られるポータルサイトを作ったことで『ポータルサイトにはあなたが更新すべき○個のフィールドしか表示されません』『入力したら自動保存されます』『データが壊れる心配はありません』と伝えられます」(ゾェルゲルさん)
従業員がポータルサイトを使うようになると「こんな機能がほしい」「あの要素があると便利になる」といった要望が次々に出てきたという。システム開発を外注していたら、こうした細かい要望や機能の追加に全て応えることは難しい。AIだからいくらでも修正可能なため、ステップ・バイ・ステップで改善できたとゾェルゲルさんは言う。
ちん里う本店がAIによって業務効率化に成功したのは「AIを高度に活用したから」ではない。ITエンジニア向けのコーディングAI「Claude Code」は使っておらず、一般的なチャット版のClaudeに「○○の機能を実装するためのコードを、そのままコピー&ペーストできるように出力して」と頼んでいるだけだという。
では、なぜ多くの成果を出せているのか。ゾェルゲルさんは「データがあるからできることが無限大です」と語った。同社は、NetSuiteの導入から数年間を、データの整備に費やした。商品の原材料、ラベル情報、サイズなどあらゆるデータを手作業で入力したという。
データ基盤を整えたことで、Claudeがデータを参照して適切な情報を返すことが可能になった。Claudeに付与しているのは、データを取得する権限だけだ。書き込みや変更はできないといい、データが破損するような「リスクはゼロ」(ゾェルゲルさん)だという。
「日本企業は、リスクを好みません。多くの人は『AIを使ったら予期せぬトラブルが起きてコントロール不能になる』というリスクを警戒するのでしょう。AIは『スイッチ』ではなく『レバー』です。最初は簡単なことから始めて、徐々にレベルアップすればよいのです。当社もテンプレートに沿って印刷用ファイルを作るところから始めました」(ゾェルゲルさん)
「AI活用で成果を出す」というと大掛かりなプロジェクトを想像しがちだが、目の前の課題を一歩ずつ解決することが重要なのだろう。リスクが低いことから始めて、AIを使う範囲をだんだん増やしていく。ちん里う本店が取り組むAI活用は、多くの企業のモデルケースになりそうだ。
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