また、部下がミスを繰り返したことを、「詰めが甘い」「意識が低い」と結論付けるのも危険だ。
事故を防ぐための安全工学では、この危険性が指摘されている。個人の不注意が原因と結論付けてしまうと、目の前の人の「まずい行動」を見るにとどまってしまい、ミスの原因までたどり着けなくなってしまうためだ。
そのため、ミスを繰り返す社員個人の資質を問題視するのではなく、その人の仕事の組み立て方や、どこにミスが入り込む余地があったのかまで掘り下げることが必要なのである。
そもそも、ミスとトラブルは別物だ。ミスをしても深刻な事態に発展する前に気付き、対処できていれば問題はない。
人によってミスの頻度には差があるが、ミス自体よりも、「ミスを起こす可能性を理解し、うまくカバーしてトラブルを未然に防げるかどうか」に目を向けるべきである。
トラブルを未然に防ぐためには、「ミスは起こるもの」として設計する必要がある。
例えば「確認作業」は、ミスが起きる前提で組まれる段取りだ。絶対に再確認すべき点を押さえてチェック作業を入れるだけでも、ミスの発生率は大きく下がる。逆に、ミスが起きない前提で段取りを組んでしまえば、途中で気付くこともできなければ、立て直しの時間すらとれない。
ミスを個人の資質の問題で終わらせずに掘り下げられれば、「宛先が複数になる作業工程で、確認作業をしていなかったからだ」という具体的な原因にたどり着くことができる。結果として、ミスがトラブルに発展することを防げるのである。
ミスをしない組織などない。あるのは「ミスがトラブルになる組織」と「ミスがトラブルになる前に止まれる組織」の違いだけである。
後者になるためには、上司のマネジメントがカギとなる。「ミスを起こすべきでない」と考えている上司ほど、ミスやトラブル報告に過剰に反応する。過剰に反応した上司を見た部下はトラブル報告を遅らせ、自分で対処しようとする悪循環が起こりうる。上司は事態が大きくなってから知ることになり、さらに強く反応することで、悪い報告が上がらず、結果的にミスがトラブルに発展する組織になっていくのである。
だからこそ、「人や組織はミスをする」ということを大前提に、仕組みを構築するべきだ。そしてミスに途中で気付ける仕組みづくりを徹底することで、「同じミス」が発生した時に原因まで特定でき、トラブルを未然に防げる組織になるのである。
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