ミスの指摘で最もすれ違いが起きやすいのが、上司が部下のミスを「これまでと同じだ」と判断して注意した場合だ。
例えば、確認などの工程で部下が何度もミスをした場合、上司は「同じ仕事でミスを繰り返した」と判断する。しかし、部下が必ずしも「同じ仕事」と捉えているとは限らない。取引先や関わるメンバー、扱うテーマが違えば、「初めての仕事だ」と受け止めている場合があるのだ。
どちらも間違ってはいないが、問題は認識がずれていることにある。この点を踏まえずに「また同じミスか」と指摘すると、部下は全く関係のないミスを持ち出して責められたと感じるだろう。
人は納得できない指摘に対して、その内容を割り引いて受け止める傾向がある。そのため、ミスが改善するどころか、「なぜ関係ないことを?」と思われて終わる可能性すらあるのだ。
認知心理学に、この「認識のズレ」を示す実験がある。ある問題を解かせる前に、考え方が共通する別の物語を読ませるというものだ。
この実験では、事前にヒントとなる物語を読ませたにもかかわらず、正解にたどり着けたのは3割ほどにすぎなかった。「事前に読んだ物語をヒントとして使え」と伝えると、正解者はやっと7割を超えた。つまり、考え方や構造が同じでも、場面が違うと自力でその共通点に気付くのは難しいのである。
この実験では、どうすれば自力で共通点に気付けるようになるのかも検証されている。原理を要約させたり、言葉で説明したり、図で示したりしても、十分な効果は得られなかった。効果があったのは、2つの事例を並べて「どこが似ているか」を本人に考えさせたときだった。
この実験結果は職場にも当てはまる。部下に「また同じミスをした」とあいまいな指摘をしても、本人が過去のミスとの共通点に気付けていない可能性があるのだ。「先月の件と今回の件、共通点は何だと思う?」と具体的に問いかけ、本人に考えさせることで初めて部下自身が「同じミスを繰り返した」と認識できるのである。
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