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なぜANAは批判を受けても「300万円」を譲らなかったのか SFC改定が突きつける“真の優良顧客”の条件(2/5 ページ)

» 2026年10月02日 09時00分 公開
[長内厚,ITmedia]

「プレミアムメンバー以外のSFC会員」がラウンジ利用の約6割

 ANAによると、SFC会員数は2019年比で約1.5倍に増え、国内主要空港ではピーク時などの満席や入室待ちが常態化している。2025年度のANA国内線利用実績では、当該年度にダイヤモンド、プラチナ、ブロンズのプレミアムメンバーになっていないSFC会員の年間平均航空券購入額はプラチナ会員の12%、ブロンズ会員の19%だった。年間平均搭乗回数も、それぞれ15%、24%にとどまる。

 一方、主要空港の国内線ラウンジ利用では、プレミアムメンバー以外のSFC会員が約60%を占めるという。年間の国内線利用は比較的少ない層が、ラウンジという限られた設備の利用では大きな割合を占めているのである。

 もちろん、この数字から「飛行機に乗らない人がラウンジだけを使っている」と結論付けてはいけない。国内線の平均値だけでは、国際線やカード決済、過去の貢献は分からない。約6割という構成比も、1人当たりのラウンジ利用頻度が過大であることを示すものではない。会員は従来のルールに従って利用している。

 それでも、現在の搭乗頻度が低くても優待が続く仕組みと、限られたラウンジ設備との間で、調整が必要になっていることは理解できる。ANA自身、日常のカード利用が限定的となり「使うカード」より「持つカード」としての性格が強まっていると説明する。過去に獲得した資格を維持するだけでなく、現在の利用にも結び付けたい。その発想が今回の再設計の出発点なのだろう。

 なお、プレミアムメンバー以外のSFC会員と、将来のLITEは同義ではない。現在の搭乗実績が少なくても、決済条件を満たす会員はPLUSになる。この違いこそ、改定の重要なポイントである。つまり、ラウンジ利用などができる優遇制度を航空機利用の頻度によってプラチナ、ダイヤモンドになることで実現するルートと、買い物などカード利用によってSFC PLUSになって実現するルートの2ルートにするということが、今回の制度設計のポイントと言える。

 ANAにとって優良顧客とは、飛行機にたくさん乗る顧客(プラチナ、ダイヤモンド会員)に加えて、ANAカードなどをたくさん利用する顧客(SFC PLUS会員)でもあるということだ。これは、ANAが航空以外のサービスへ注力するということでもあろう。

photo 新制度は2028年4月1日に始める(ANAのWebサイトより)

「ラウンジ利用6割」の真実 なぜ一律制限を撤回したのか?

 ANAの説明によるとラウンジの利用者数は、夕方などには、快適性を保てる座席数の目安を超え、一部では座席数そのものを上回るという。一方、プレミアムメンバー以外のSFC会員が利用していても余力のある時間帯は多い。ただし、これは複数空港の平均であり、個々の空港や特定日の混雑状況まで示すデータではない。

 このデータを踏まえると、今回の修正は、混雑している時間と、空いている時間を分けて考え直したものと推測できる。

 ラウンジの空席は、翌日に繰り越して使えるわけではない。空いているときに会員を受け入れても、他の利用者の快適性を損なわないなら、顧客との関係を維持する機会になる。逆に、混雑時に際限なく受け入れれば、上質な時間を提供するはずのラウンジ自体の価値が下がってしまう。優待を受ける資格を配ることと、実際に満足できる体験を提供することは、同じではない。

 重要なのは、利用者を減らすこと自体ではなく、快適に利用できる状態をつくることだ。「誰を入れるか」だけでなく「いつなら受け入れられるか」を管理する。4月案の一律制限に対して、今回の見直しは設備の活用と顧客体験の両立を図る、より合理的な運用と評価できる。

 もっとも、固定された時間帯の開放が決まったわけではない。ANAが示したのは混雑予測に基づく運用であり、利用者が事前にどこまで見通しを持てるかは、今後の制度の具体化において問われる。

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