全日本空輸(ANA)に対するユーザーの不満が、SNS上を中心に噴出している。5月19日に実施した運賃体系と予約システム刷新に伴い、エラーが多発している。それに加え、電話での問い合わせに対する長い待ち時間、さらにメール返信まで「最長2カ月」を要するカスタマー窓口として致命的な状況は、今も解消されたとは言い難い。
同社は6月半ば、自社サイトに異例の「お詫び」を立て続けに掲載している。だが記者会見による説明は、いまだにない。ANAの平澤寿一社長による日本経済新聞の記事での発言「運賃体系刷新で国内線が便利になっている」がネットで“炎上”するなど、世間の反応と企業対応のギャップが顧客の不信感に拍車をかけている。
一方、日本航空(JAL)は、5月に再び発覚したキャビンアテンダント(CA)の飲酒問題に対し、国土交通省から厳重注意を受けた。それに伴い、6月12日に当該のチーフCAを懲戒解雇処分とし、社長を含む全役員の処分を即座に発表した。
身内に極めて厳しい処分を下すことによって、ブランドの規律を世間に示したJAL。一方、実務混乱のさなかにあっても一般向けの説明責任を果たさないANA。企業の明暗を分ける「危機管理広報」とガバナンスの分岐点を、航空2社の対応から考える。
ANAは5月19日、新たな運賃体系を導入した。それと同時に予約システムも刷新。そのさなかで、公式アプリや公式サイトで「オンラインチェックイン(搭乗手続き)ができない」といった声が続出した。チェックインができないまま空港へ行くと、座席数を超過するオーバーブッキング状態で、他の便へ一方的に振り替えられた客もいたという。
飛行機のオーバーブッキング自体は珍しくなく、他社でも見られる。ただ、国土交通省の資料によると、ANAのオーバーブッキング数はJALほか他社よりも群を抜いて多い。例えば2024年1〜3月の場合、JALが50席なのに対し、ANAでは739席もあった。
しかも、ANAは新たな運賃体系の導入に合わせ、国内旅客運送約款も改定している。そんな一連のトラブルに対し、ANAは6月11日、公式サイトにお詫びを掲載。「メールの返信に2週間から2カ月ほどお時間を要する場合があり」という異例の事態を公表した。
さらに6月26日に開いた株主総会では、最安で事前座席指定ができない「シンプル運賃」で、事前座席指定ができる有料オプション導入の検討も明らかにしている。
ANAは4月にも、上級会員制度であるスーパーフライヤーズカード(SFC)の制度改正において批判を浴びた。ANAカードまたはANA Payでの年間決済額300万円未満の会員に対し、ANAラウンジの利用を制限。さらに世界最大の航空連合であるスターアライアンスゴールドの資格も付与しなくするとした。
そのため、SFCを取得するために「修行」したユーザーや長年の優良顧客、ビジネスパーソンらからも「足切り」という言葉が相次いだ。
SFCに関し、株主総会の前日、公式サイトで「スーパーフライヤーズカード制度改定内容の見直しに関するご案内」を掲載。すでに案内済みの内容を再検討し、その詳細について「9月までにあらためて案内する」という。一度発表した内容を2カ月余りで撤回する事態に至ったのは、SFC解約やビジネス客離れが相当数起きたからではないかという推測もある。
確かに近年、全国の空港におけるANAラウンジは混雑している。年会費1万円超で維持できるSFC会員が急増したことも一因だろう。先の株主総会で、平澤社長自身が2030年度に向けて混雑がさらに悪化するという見通しを示した上で、将来にわたってサービスを安定的に維持するために今回の新ルールを設けたと説明している。
だが、ラウンジの混雑解消を大義名分としつつ、既存会員への敬意より「今の決済額」を優先した企業としての論理も明らかにしてしまった。「ANAとはそういう会社」というイメージができてしまったといえる。そんなユーザーの不信感を払しょくするのは、そう簡単なことではない。
一方JALにも最近、不祥事が起きた。5月23日の乗務前日に発生した、CAの飲酒問題だ。アルコール検知に対し、組織としての安全管理システムの甘さを、国土交通省から「安全意識が徹底されていない」と厳重注意された。JALは7月17日までに、再発防止策を国土交通省へ提出する予定だ。
ただ、その後の危機管理に対する収束のスピードは速かった。まず5月27日に、謝罪の記者会見を実施。6月12日には、CAの最上級職である先任客室乗務員(チーフCA)を躊躇(ちゅうちょ)なく「懲戒解雇」とし、鳥取三津子社長ら全役員の処分を同時に発表した。
JALでは、過去にもパイロットの飲酒問題が起きている。ANAより先の6月23日に開催した株主総会でも、鳥取社長が「職を賭して取り組む」と述べて謝罪した。「身内へ最も厳しく当たる」ことによって、社会的な信頼を守るというコンプライアンス順守への執念を感じる。
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