宮武和多哉の「乗りもの」から読み解く:
乗り物全般ライターの宮武和多哉氏が、「鉄道」「路線バス」「フェリー」などさまざまな乗りもののトレンドを解説する。
北陸新幹線・金沢駅〜敦賀駅間の延伸開業によって、これまで大阪駅〜金沢駅間を直通していた特急「サンダーバード」、名古屋駅〜金沢駅間の特急「しらさぎ」は、敦賀駅での乗り換えが必要となった。
首都圏から福井県へのアクセスは新幹線直通で便利になったが、関西・名古屋から北陸へのアクセスは、乗り換えによって不便になったという声も大きい。
北陸〜大阪・名古屋間の移動では、時間短縮の効果以上に価格が高くなっていることも、不満に拍車を掛けている。例えば、福井駅〜大阪駅間であれば所要時間は最速で1時間44分、時間短縮はわずか3分にとどまり、運賃は7260円と、1150円の上昇。金沢駅〜大阪駅では22分の短縮で、料金は7790円から9410円と、1620円値上げした。同じ延伸地域でも、小松駅・加賀温泉駅などから東京方面は時間短縮・運賃値下げとなっており、対照的だ。
乗り換え増加、薄い時間短縮効果、運賃上昇……。新幹線開業後に生じたこのデメリットは、果たして北陸〜関西間の移動に、どう影響を及ぼすのだろうか。
なお、筆者は大阪在住の会社員で、北陸への出張で特急サンダーバードに月1〜2回乗る。かつ横浜でも10年ほど勤務経験があり、勤務時代は上越新幹線から特急「はくたか」に乗り換えるか、小松空港から北陸に入る、という生活を続けていた。
乗り物好きでも心がときめかなくなる程に「サンダバ」(サンダーバードの略称)、「はくたか」ヘビーユーザーであった立場から、北陸新幹線・敦賀乗り換え問題について検証していきたい。
乗り換えに四苦八苦……敦賀駅現地の様子は?
北陸新幹線・敦賀駅での乗り換えは、約30メートルの高低差、2フロアの上下移動を要する。在来線と新幹線の乗り換えがある西九州新幹線・武雄温泉駅、東北新幹線・八戸駅(延伸開業により乗り換え解消)などは同一ホーム・平面乗り換え(距離にして10メートルほど)であり、新幹線・在来線乗り継ぎでここまでの上下移動を要するのは、この敦賀駅くらいだ。
乗り換え改札には19基の自動改札機が設けられ、エスカレーター26基、大型エレベーター6基でスムーズな乗り換えを図るなど、一定の工夫はされている。しかし万歩計で測った徒歩距離は最大で300メートル(新幹線1号車⇔サンダーバード9号車の場合)。これに2フロアの上下移動が入ると、どうしてもストレスはある。
しかし、実際の移動は苦ではあるものの、そこまでの難易度ではない。筆者が入場券を5枚購入して新幹線ホーム⇔特急ホームの移動を5度試みたが、移動時間は平均で3分20秒程度(最短2分52秒〜最長3分50秒)。巨大なキャリーバッグを持った乗客が前にいるとエスカレーターが少々詰まるが、建物のヨコ幅が30メートルほどあるおかげで通路は広く、1編成約470人の定員がほぼ埋まったサンダーバードが到着しても、乗客が団子状の混雑になることはなかった。
大荷物を抱えた人や子ども連れ、ご年配の方は急角度のエスカレーターに乗りづらいようで、戸惑う姿も見られたが、それでも最短8分という乗り換えには間に合う範囲の移動だ。このくらいの乗り換えなら、動線が何度も折れ曲がる北海道新幹線・新函館北斗駅や、京葉線の東京駅乗り換えの方が、はるかにつらい。
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