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「シャッターを押すことは制約ではない」――カシオの考える、カメラの未来像インタビュー(2/2 ページ)

» 2010年07月27日 12時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
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――ソニー「NEX」シリーズが3D対応したほか、富士フイルムも昨年投入した3Dデジカメ「FinePix Real 3D W1」の後継機を投入する意向を示しています。また、3D対応のテレビやパソコンなど次々登場している状況をどのようにご覧になりますか。

中山氏: 3Dは時代の波でしょう。ですが、冷静に見れば、テレビが3D化してもそのコンテンツは映画やスポーツといった、「これは」という映像を鑑賞する使い道がメインなのでは。カムコーダは作品づくりという要素もありますから、3Dへの親和性は高いと思いますが、手軽さが大事なデジタルカメラが3Dを主機能として備えるのはそぐわないのではないでしょう。そうした意味では、ソニー「DSC-WX5」などのように背面液晶で疑似的な3Dを体感できるのはソニーさんらしい、面白い取り組みですね。

 ただ、3Dが重要なキーワードであることは事実です。取り組むとすれば「カシオらしい」やりかたで挑みたいと思います。

――デジカメの動画機能についてはどのようにとらえてらっしゃいますか。

中山氏: まずは最速1200fpsのハイスピードムービーを楽しんでもらいたいです。動画撮影機器全般の話でいえば、カムコーダは「子ども」「旅行」の撮影機器というポジションからなかなか抜け出せていませんが、一方で撮影してすぐにYouTubeなどへアップできるFlip Videoのような製品も独自のポジションを築いています。

photo Flip Video(写真はFlip Video Mini)

 いまやデジカメでフルハイビジョン動画を撮影するのも珍しいことではありませんから、カムコーダの用途はデジカメに取り込まれていくのではないでしょうか。これからは、手軽に撮って手軽に見て、そして共有する、その市場が大きくなると思います。そうした流れの中で、さまざまな楽しさが顕在化していくでしょう。

――それは、これまでのように「静止画はデジカメ、動画はビデオカメラ」ではなく、利用するシチュエーションや、それをどうやって活用するかで、デバイスを使い分ける時代が来るということでしょうか。

中山氏: まさにその通りです。静止画撮影機と動画撮影機の境はなくなりつつあるのです。デジカメはシャッターを押して静止画を記録しますが、それは技術的な制約ではありません。常に動画を撮り続けていて、静止画が必要ならば、そこで必要な1枚を撮り出すアプローチが理想だと思っているのです。

 その思想を形にした1つが超高速連写やパスト連写(シャッターを押す前の被写体も連写する)などを搭載したHIGH-SPEED EXILIMシリーズで、“未来のカメラを少しだけ先取りした”という意識で作り出した製品です。連写が重要なのではなく、「常に撮っている」のが重要なのです。

 常に撮影しているという観点からすれば、電池寿命も重要です。「EX-H15」は搭載バッテリーで1000枚の撮影が可能なのですが、動画を撮る、背面液晶で写真や動画を見るといった使い方は既に一般化していますから、「どれだけ長く使えるか」を実現するためにも電池寿命は大切なのです。

――EXILIMシリーズの形状はいわゆる「コンパクトデジカメ」です。見た目から使い方や思想の伝わる製品、それはカムコーダ的なスタイルの製品なのかもしれませんが、そうした製品が登場する可能性はあるのでしょうか。

中山氏: 軸足としてはまだ静止画にありますが、「カムコーダではないけれど、動画の比重が高い製品」はあり得えます。弊社はデジカメの動画機能実装を比較的早期より行っていましたし、録画ボタンを搭載した製品も同様にはやくから投入しています。新しいコミュニケーションツールを目指したカメラの投入はあり得ると思います。そうした場合、その形状は「いままでのカメラ」と違ったものになるかもしれませんが。

 携帯電話での撮影も含め、動画撮影は身近な存在になっています。可能な機器が周囲に十分にあるからこそ、用途や楽しさの提案をどれだけできるかが、これからのカギになるでしょう。

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