今回は野球である。ポピュラーなスポーツでありながらこの連載で取り上げるのははじめて。今回、ITmediaの野球チームが練習試合をするというので撮らせてもらったのだ。それがもう奇跡のような好天。屋外スポーツは天候によって撮影の難度が違ってくるからね。
そもそも野球はとても撮りやすいスポーツなのだ。
何しろ主役がはっきりしてる。ピッチャーとバッターである。両者は自分の場所から動かない。1対1の勝負なのでどちらかを狙っていればいい。しかも1球ごとに間があるので、セッティングを見直したり一息ついたりできる。プレイする方も撮る方も1球ごとに集中してるわけだ。
ショートがダイビングキャッチしたとこを撮れとか、バッターがジャストミートとした瞬間を撮れとか無茶な注文をされない限り、難しい技術はいらない。そのかわり、撮影枚数は膨大になる。1球ずつ連写でシャッターを押してたら大変だ。だから容量が大きくて高速なメディアを用意すること。
今回はニコン「D7000」(レビュー)で撮影。草野球の場合、グラウンドの近くから撮れるので望遠はそんなに必要ない。今回は70〜300ミリの望遠ズームレンズを使ったが、顔のアップを撮らないのなら200ミリぐらい(D7000のようなAPS-Cサイズセンサーを搭載したカメラの場合。つまり35ミリ換算300ミリぐらいのレンズ)あれば大丈夫。
まずはピッチャーから。
D7000の連写速度は6コマ/秒。この速度はどのくらいか。5枚連写した写真を並べてみよう。
ピッチャーが足を上げてテイクバックするまではゆっくりだが、投げる瞬間はすごく速い。見てわかるように腕を引いてからリリースするまでに切れるシャッターは1回だけ。ボールをリリースする瞬間を撮りたいと思ったら、少しずつタイミングを変えながら何度も連写していい瞬間を撮れるのを待つのが一番簡単。
そうすると、こういう一番いいタイミングのカットが混じってくる。
連写はいさぎよくない、勝負はだまって一発勝負。と思う人はファインダーをのぞきながら、ここだ、という瞬間を狙って見るのもいい。次は連写を使わず一発で撮ったもの。
ピッチャーは同じリズムで投げてくれるので、じっと見てタイミングを合わせることができればけっこう撮れる。大事なのは、カメラのレリーズタイムラグ(シャッターを切ってから実際に撮影されるまでの時間)や「自分のタイムラグ」(よしっと思ってから実際に指がシャッターを押しきるまでの人間側のタイムラグ)を知っておくこと。こればかりは練習で。
次は三塁側から撮ってみよう。撮影場所をちょこまかとかえられるのも草野球の楽しさ。
投球フォームを構図いっぱいに入れて撮りたいときは、足を前に踏み出すことを考えて、前側を空けておくこと。
そうするとうまくすればリリース直後のボールも撮れる。
次は正面に近い位置から撮ってみる。
ピッチャーが立った場面(投げる前ね)で構図を合わせると、投げる瞬間は腰が低くなっているので頭の上に無駄な空間ができる(上のリリースの瞬間の写真がその例)。せっかくだから表情が見えるくらいアップで撮りたい。だからといって頭がギリギリはいるくらいで合わせるとこうなる。
肝心なところが切れてしまった。ああ。
気を取り直して、もう少しレンズを上に向けてやると無事リリースの瞬間が撮れました(わかりやすいように焦点距離を同じにしてるので足が切れてるけどご容赦を)。
ピッチャー編最後はバックネット裏から。
バックネット裏から撮るとネットが邪魔なんだけど、実は、ネットは大きくボカせばほぼ消えてくれるので(まあ写真は若干モヤとしちゃうけど)、あまり気にしなくていい。
で、この構図でそのまま撮るとどうなるか。こうなる。
左側(つまり右手側)が思い切りつまっててバランスが悪い。
投球フォームを考えて構図を決めるべし。うまくいくとこうなる。
正面から縦位置で撮ると頭の上に少し余裕ができるので、そこに投げた後のボールがうまくおさまってくれる。お勧めのアングル。
撮るときのセッティングだが、最初の横位置の写真はシャッタースピード1/800秒、こちらは1/1600秒。晴れていれば廉価な(つまりF5.6くらいの)望遠レンズでもISO400〜800で撮れるので問題なし。
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