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「NEX-5R」第1回――これはある意味カメラじゃない、発射台だ長期試用リポート

» 2012年11月27日 10時49分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

 我ながら好きだよなぁ、と思う。一昨年にNEX-5、昨年にNEX-5Nと購入し、つい先日、NEX-5Rを購入した。同時期に投入されたNEX-6にもひかれたが、結果としては5Rで正解だったかなと思えてきた。今回はそんなお話。

photo 「NEX-5R」(ブラック)。既存Eマウントレンズはシルバーが多いが、今後は「E 35mm F1.8 OSS」や「E 10-18mm F4 OSS」などブラックのレンズが増えそうなのであえてブラックを選択。精かんでなかなか良い感じ

 さてNEX-5Rである。機能や特徴については掲載されているレビューを参照してもらうとして、10日間ばかり利用した感想から言えば、5Nに比べ、基本的に画質面での差はほぼなく、より使いやさがましている。画質面での厳密な検証はまだしていないので完全に同画質とは言い切れないが、高感度撮影時の画質も高く、標準ズームレンズにおけるAFも高速だ。

 新搭載された電子ダイヤル(コントロールダイヤル)とFn(ファンクション)ボタンによって、フルオート以外の撮影が実用的なのも好感を持てる。5Nもファームウェアアップデートによって背面ソフトキーへの任意機能割り当てが可能となってかなり操作性は向上したが、背面側に用意されているキーはカメラを握った状態だと使いにくい。その点、電子ダイヤルとFnボタンはカメラを右手でグリップしたまま、片手操作できるので、より撮影時に使いやすい。全体的なボディデザインは初代から大きな変更を加えられていないが、実際に使ってみると、確かに5Nより使いやすい。よくできたデザインだと感じる。

photophoto 5Rから新設された、電子ダイヤル(コントロールダイヤル)とFn(ファンクション)ボタン

 5Rと6の主な仕様的な違いは、ビューファインダー(EVF)とストロボ、それに撮影モードダイヤルの有無で、この3つを備える6の方が、必然的にボディは大きく、重い。仕様の違いを撮影スタイルの違いに言い換えるならば、ファインダーをのぞきながら素早く撮影モードを切り替えてという、一眼レフ的な使い方をしたいならNEX-6、それより軽快さや気軽さを重視するならNEX-5Rと表現できる。

 両モデルはWi-Fiを搭載しており、撮影した写真や動画をスマートフォン/タブレットに転送できるほか、カメラ内のアプリを使えば、スマホをリモコンにしたり、カメラからSNSへ直接画像をアップロードできたりする。Wi-Fiで転送するだけならば、今春より各社が取り組みを始めているが、ここまで「カメラで撮った後にどう楽しむか」を提案しているカメラはあまりないように思う。撮った後の楽しみを重視するなら、一眼レフ的なカメラ純度の高いNEX-6より、軽く持ち運びやすいNEX-5Rが好ましい。

 そうは言っても、これらの機能が使いにくければ残念なだけだが、Wi-Fi転送にしても各種アプリにしても、なかなか使いやすく、楽しい。今のところ利用している範囲では、Wi-Fi接続のコネクションがなかなか確立しなくてイライラとか、転送中にハングアップといったトラブルにも遭遇していない。現時点では「ピクチャーエフェクト+」を除いて、スマホやタブレット、facebookなどSNSとの親和性が高い機能/アプリが中心であることもあって、NEX-5Rは高画質スナップを撮影して、各種スマートデバイスやSNSへ渡す“発射台”として非常に重宝している。

 もちろん“発射台”としての違和感を覚える部分もある。例えば、デフォルト設定時の撮影状態でソフトキーBを押すと「スマートフォン転送」が起動して「この画像」「この日の画像全て」「カメラ内の画像全て」の転送パターンを選択する状態になるが、使い始めてすぐは、撮影状態で「この画像」とはどういった意味なのだろうかとしばし考え込んだ(マニュアルには書いてあるが、「この画像」を選択すると、撮影状態に入る前に表示していた画像を転送する。ただ、どの画像かはWi-Fiを起動してスマホなどに接続した状態にならないと分からない)。

 撮った写真をスマホに転送するならば、再生画面からの転送開始が手順として分かりやすい。普通に考えれば、「撮る、確認する、送る」の段階を踏むからだ。しかし、前述の手順以外には、「メニュー」→「再生」→「スマートフォン転送」とたどらないと転送は行えない。スマホをリモコン代わりにする「スマートリモコン」は「アプリケーション」から呼び出すし、再生画面から機能を呼び出せないのならば、スマホへ画像を転送する機能もアプリにしてしまい、「アプリケーション」からアクセスするようにしたほうが分かりやすいだろう。ちなみに、再生画面ではソフトキーAに「MENU」、ソフトキーBに「削除」が割り当てられており、「MENU」を押すと再生に関するメニューではなく、撮影や初期設定を含むメニューが呼び出される。ちょっと意図の分からない仕様だ。

 スマホ/タブレットへのWi-Fi転送については、このように機能へのアクセス方法に問題があるように感じられるものの、転送機能そのものは快適であるし、カメラアプリ「ダイレクトアップデート」を利用してのSNSアップロードも、モバイルルータ、あるいはテザリング可能なスマホがあれば高画質な写真を手軽にアップできて便利だ。「ダイレクトアップデート」はアップロード先が現時点ではPlayMemories Onlineかfacebookのいずれかしか選択できないが、アプリのバージョンアップなどで、いずれほかのアップロード先も用意されるだろう。

photophoto カメラアプリ「ダイレクトアップデート」を利用して、facebookにまとめてアップロード。デフォルトでは「ソニーのNEX-5Rで撮影しました」とメッセージが添えられるが、これはつけないあるいは任意のメッセージに変更も可能

 スマホ/タブレットへの転送だけならば、Eye-FiやFlashAirなどの製品が既に市場に流通しており、それらの愛用者が多くいることを考えると、正直なところ本製品のやり方が万人にとってベストではない。それに、Wi-Fiによる連携という観点だけならば各社春モデルのコンパクトデジタルカメラが既に先行している。

 ただ、APC-Sサイズセンサーを搭載し、画質面でも定評あるNEX-5の最新モデルがこれらの機能を搭載してきたことは評価したい。スマホ/タブレットの高画質化も進んでいるのだから、表示する写真だって高画質な方がいいに決まっている。利便性と画質は両立されるべきだからだ。

 少々長くなってきたので、新レンズ「E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS」や各アプリの感想などは次回に。

photo F6.3 1/100秒 ISO100
photo F6.3 1/100秒 ISO100
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