富士フイルムのミラーレス用レンズ「XFレンズ」には、最近のレンズでは珍しいひとつの特長があります。それは、もはや絶滅危惧種ともいえる「絞りリング」を備えること。リング回転という昔ながらのアナログ操作で、絞り値の調整ができることです。
鏡胴部のリングを回すと、それに連動してレンズ内部の絞り羽根がダイレクトに動き、絞りの径(虹彩)が同心円状に大きくなったり小さくなったりします。そんな艶めかしい絞りの動きを指先に感じ取りながら、自分の手でカメラを操作している実感が味わえるのです。このレトロでフェティッシュな操作感こそが、オールドカメラファンの心を揺さぶる「X」シリーズの物欲刺激ポイントになっています。
今どきの新しいカメラユーザーなら、こうした絞りのアナログ操作に特に興味はないかもしれません。あるいは、逆に新鮮に感じる人もいるでしょう。好き嫌いはともかくとして、近ごろ似たり寄ったりのデザインのカメラやレンズが増えている中、独自のアナログフェチ路線を展開するXシリーズとXFレンズは、個性が際立った存在といえます。今後登場するXFレンズがすべて絞りリング付きとは限りませんが、現在発売中の5本のラインアップはいずれも製品名に「R」の文字が含まれ、絞りリングの搭載を示しています。
今回試用したのは、そんな絞りリング付きのXFレンズの1本「フジノンレンズ XF14mmF2.8 R」です。「ふじのん」という言葉の響きには、どことなく愛らしさが漂いますが、実は長い歴史を誇る世界有数のレンズブランドのひとつ。キヤノンやニコン、タムロン、ヘキサノン、ヤシノンなどと同じく、光学メーカーの社名やブランド名の語尾にonを付けることが、かつて流行った時代があったようです。
35ミリ換算の焦点距離は21ミリ相当。広々とした画角が得られる超広角のレンズです。ただ超広角とはいっても、今どきは12〜16ミリ相当からはじまる超広角ズームがほかに数多くあり、それらを見慣れた目には、21ミリ相当だと超ワイドな印象は受けません。XFレンズの場合も、15〜36ミリ相当の画角に対応した「10-24mm 超広角ズーム F4 OIS」が今後のロードマップ上に予定されています。より広い画角や極端なパースペクティブを求めるなら、そっちを待ったほうがいいかもしれません。
この「XF14mmF2.8 R」の魅力は、適度な画角の広がりと、取り回しのよさ、描写性能の高さの3つをバランスよく兼ね備えていることです。超広角にありがちな歪曲や色収差が目立たないように補正されているので、風景や建築物などをきっちりと撮影する用途に打って付け。F2.8という開放値の明るさを活用して星空を撮ったり、携帯性のよさを生かしてスナップを楽しむのもいいでしょう。
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