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趣味としての写真撮影がいっそう楽しくなる3台のカメラ2013年注目したカメラ&トピックス(フォトグラファー 永山編)

» 2013年12月27日 00時00分 公開
[永山昌克,ITmedia]

携帯性と高画質を兼ね備えたフルサイズミラーレス

 今年もっとも注目したデジカメは、ソニーが11月に発売したフルサイズのミラーレス「α7R」だ。レンズ交換ができるフルサイズ機といえば、これまでは機材一式の大きさと重さを覚悟しなければならなかったが、α7Rでは一回り以上のコンパクト化を達成。フルサイズならではの高画質と、ミラーレス構造による小型軽量ボディを両立させた画期的な製品といっていい。

photo ソニー「α7R」

 有効3640万画素のフルサイズセンサーが生み出す画質は、解像感が高く、遠景の細かい部分までをきっちり表現できる。低ノイズの高感度画質や滑らかな階調性、クリアでナチュラルな発色についても好印象で、画質面の満足度は高い。同じ画角で比較した場合、フルサイズ機はAPS-Cセンサー機に比べてレンズの焦点距離が長くなるため、ボケを生かした写真が撮りやすい点も魅力だ。

 なおα7Rの撮像素子は、解像感重視のローパスレス仕様となる。そのため、都会の建物など規則的な模様がある被写体を撮ると、ごくたまに画面の一部にモアレが生じることがある。モアレは、わざと発生させようと思ってもなかなか撮れない。偶然モアレが生じたら「当たり」だと思って楽しみたい。

 直線を多用した独特の外観デザインについては好みが分かれるところ。三角頭のファインダーをボディ天面に配置した、昔ながらの一眼レフ風スタイルを採り入れながら、レンズマウントの付け根部分にエプロンと呼ばれる段差がないため、見た目にちょっと間が抜けた印象を受ける。ただ、しばらく使っていると目が慣れるせいか、これはこでれ引き締まったスマートなスタイルのようにも思えてくる。既存のフルサイズ一眼は曲線的でふくよかなデザインが多いが、何故かそっちが急激に古めかしく感じてしまう。

 惜しいのはシャッターボタンを押した際の操作感があまりよくないこと。長めのレリーズタイムラグも気になる。そのほか、操作面には注文を付けたい点がいくつかある。しかし一方で、そんな細部の不満点には目をつぶってもいいと思えるくらい、フルサイズ画質と携帯性の両立という、ほかにはない圧倒的な魅力のほうが勝っている。

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高品位なボディとスムーズな操作感覚が魅力の逸品

 オリンパス「OM-D E-M1」は、今年もっとも気に入ったミラーレスのひとつ。特に注目したいポイントは、ボディの質感の高さと使い勝手のよさだ。外装は、高品位なマグネシウム合金製で、グリップ部には手触りのいいラバーを配置。手に取った感触がすこぶるよく、シャッターを押した際のレリーズ感も心地よい。AFは、シャッターボタン半押しによってほぼ無音で作動し、素早く合焦する。

photo オリンパス「OM-D E-M1」

 さらに、電子ビューファインダーと液晶モニタの視認性は上々で、アイセンサーによる両者の切り替えもスムーズだ。豊富なカスタムメニューを利用して、操作性を自分流に細かくカスタマイズできる点もありがたい。このあたりの快適な操作感は、ライバルとなる他社ミラーレスに差を付けている。

 画質については、キットレンズである「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」のキレ味のよさが光る。開放値から画面全体でシャープな描写が得られ、被写体のディテールまでを克明に再現できる。それなりの価格がするものの、E-M1を買うなら是非、このレンズは入手したいところだ。

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撮る楽しみを満喫できるアナログライクな操作性

 一眼レフの分野では、いまいちばん気になるのがニコン「Df」だ。メカニカルダイヤルを多用したクラシックデザインのフルサイズ一眼である。Dfの外観を見て、その仰々しいダイヤルやボタンに戸惑い、うんざりする人がいるかもしれない。一方で昔ながらの一眼レフカメラを思い出し、懐かしく感じる人も少なくないはず。

photo ニコン「Df」

 外観だけでなく、操作性についても賛否が分かれるだろう。これまでの多くのデジタル一眼では、液晶表示を見ながら、ボタンやダイヤルを使って各種の設定を素早く調整できる。ところがDfでは、たとえばISO感度を変更するだけでも、カメラを両手で持ってファインダーから目を離し、左手でロック解除ボタンを押しながら、右手でどっこいしょとダイヤルを回す、という手間が必要になる。

 このスローな操作感こそが、ほかのデジカメでは得られないDfならではのリズムである。すべてがマニュアルというわけでなく、オートISO機能もあるし、オート露出やオートフォーカスももちろん使える。だが、狙いに応じて個々の設定を自分で決め、アナログ感覚のダイヤルをいちいち使って確実にセットする、その行為自体を楽しめることがDfのいちばんの魅力だ。

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 そもそもカメラは、直に手に取って使う道具なので、見た目のデザインとホールド性、そして操作感覚が、スペックなどの数値以上に重要な要素になっている。デザインや操作感が気に入ったカメラなら、いい写真が撮れそうな気持ちになるし、逆に趣味が合わないカメラなら、撮影意欲が低下してしまう。そして結果的には、写真の写りにも影響を与えるだろう。

 そんな意味で、今回取り上げた3台は、目を引く個性的なデザインが撮影者の気分や意欲を高めてくれる、とてもチャーミングなカメラである。

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