キヤノンの「EF-S24mm F2.8 STM」は、同社APS-Cサイズ機用の広角単焦点レンズだ。35ミリ判換算の焦点距離イメージは38ミリ相当に対応する。広角と呼ぶには画角は少々狭め。厳密には「準広角」に分類されるレンズである。
最大の特長は、一般的にパンケーキと呼ばれる薄型軽量デザインを採用したこと。レンズの全長は22.8ミリで、重量は125グラム。最小最軽量の一眼レフ「EOS Kiss X7」と組み合せた場合、使用時重量は約495グラム。持ち歩きに有利で取り回しに優れ、日常的なスナップを撮るのに打ってつけだ。
同じくパンケーキスタイルの製品として、同社は2012年にフルサイズ対応の「EF40mm F2.8 STM」を発売しているが、そのAPS-Cバージョンといっていい。両レンズの外形寸法は同じで、デザインもうり二つ。フィルター径はどちらも52ミリであり、オプションのレンズフード「ES-52」は共用することができる。
写りは、十分なシャープネスとコントラストを備えたキレのある表現を確認できた。絞り開放値の場合、周辺部がやや甘く、光量低下も見られるが、1段絞れば大きく改善される。歪曲や色収差は気にならない。
最短撮影距離は16センチで、最大撮影倍率は0.27倍。単焦点レンズとしては結構近寄れるほうだ。
AFは、「EF40mm F2.8 STM」と同じくSTM(ステッピングモーター)+ギアタイプとなる。キット付属の標準ズーム「EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS STM」などSTM+リードスクリュータイプを採用したレンズとは異なり、フォーカスの駆動音はややある。ただうるさく感じるほどではない。
フォーカスリングはモーター駆動式で、くるくると際限なく回るようになっている。感触は軽く、マニュアルフォーカス用には不向き。AF速度については比較的高速で、ストレスは感じない。
多くのパンケーキレンズがそうであるように、鏡胴の薄さと軽さこそが魅力であり、ほかに際立った部分があるわけではない。38ミリ相当という焦点距離にしても、F2.8という開放値にしても、ごくふつうのスペックだ。
そのため、たとえば超広角ズームや超望遠ズームのようにハッタリをきかせた構図で撮影したり、大口径レンズのように大きなボケを表現したり、といった芸当はできない。得られる絵に関しては、キット付属の標準ズームと大差ないかもしれない。
だが、撮る楽しさという点では標準ズーム以上のものがある。カバンからサッと取り出し、気に留まったものをメモ感覚でサクサクとスナップできる。単焦点なので、ズームをしながら構図で迷うこともなく、目の前の一定の範囲だけを素早く切り取れる。そんな機動性のよさがやみつきになるレンズである。
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