次期BEA WebLogic Server「Diablo」で実現するノンストップアプリサーバ

Webサービス配信の基盤、WebLogic Serverの新版では、オートチューニングを始めとする高可用性に対する機能拡張が目白押しだ。

» 2004年06月18日 23時52分 公開
[木田佳克,ITmedia]

 BEAの次期コードネーム「Diamond」に含まれる「BEA WebLogic Server 9.0」(コードネーム、「Diablo」)は、エンタープライズ利用の信頼性、堅牢性を実現すべくさまざまな拡張を行う。6月17〜18日まで東京・渋谷、セルリアンタワー東急ホテルで開催の「BEA eWorld JAPAN 2004」では、米BEA Systems、ジム・マリノ氏から製品ポイントや信頼性、管理、パフォーマンス実現面などが紹介された。

Diablo技術担当の米BEA Systems、ジム・マリノ氏

 「Diabloは、ユーザーからの意見を基にゴールを設定した」とマリノ氏。統一プラットフォームの実現、TOC削減も大きなポイントとなる。また、現バージョン8.1には利用シーンによって複雑さがユーザーフィードバックにあったという。このため、管理機能に大きな変化があり、複雑な個所の簡素化が目的のひとつとなった。

管理機能の簡素化がメタデータ扱いへとつながる

 マリノ氏は、信頼性向上に「ノンストップアプリケーションサーバ」のキーワードをいちばんに掲げた。関わる機能には、「管理者コンソール」の拡張、ユーザーインタフェース(UI)の簡素化がある。また、この機能は「サイド・バイ・サイド・デプロイメント」とも呼ばれると言い、プロセス制御によって実現されることを挙げた。将来的には、このテクノロジーをほかのアプリケーションにも拡張する予定という。

 「さらに重要なのは、ロールバックもサポートしている点」とマリノ氏。例えば、デプロイ環境で構成問題があり、BからAのサーバ(アプリケーション)に戻したいといった場合でも、無停止のまま可能となる。このような操作も管理者コンソールで行うことが可能だ。

 稼働時の問題追及を容易にする、オペレーションログ収集も備わる。これまでは、サーバをダウンさせてからテストを行い、そしてデプロイ後にリプレースといった手順が一般的だった。また、オペレーション診断フレームワークも採用されている。特定のしきい値を設定することができ、リクエスを監視してコンテナ領域を超えるモニタリングが可能だ。

 管理者コンソールのUIが簡素化の中心となる。「ユーザーからのフィードバックにより現バージョン8.1の情報過多を見直した。コンフィグレーションアシスタンスを拡張し、改善している」とマリノ氏。

 また、スクリプトサポートはより高い制御を求める開発者向きだ。現バージョン8.1でも、BEAの開発者コミュニティ「dev2dev」で繰り広げられていたが、Diabloの一機能として取り込むという。

オートチューニングで動的なリソース配分が可能に

 Diabloは、ユーティリティーコンピューティングにも関わる。どのように柔軟性を持たせ、コンピュータリソースを利用していくかがテーマとなるが、「現状ではリクエスト負荷がばらばらであることが事実。より動的なサーバ要求変化に応じなければならない」とマリノ氏。

マリノ氏が強調するオートチューニングの実現。エンタープライズ向けに高可用性を実現する機能のひとつ

 これに対し、現バージョン8.1では直線的な拡張であったと言い、Diabloでは「オートチューニング」が実現される。これは、管理者がポリシー定義できる機能であり、例えば、200ms以内でセッション完了と設定すれば、場合によりスレッドを増やす、または個々のスレットのリクエスト優先度を高くする、という柔軟さがある。「オートチューニングは、技術者である私がもっとも気に入っている機能だ」とマリノ氏。

独自仕様をオープンに、Webサービス統合への架け橋がSOAへ

 複雑性は、統合によって簡素化するという試みも挙げられた。すでに現バージョン8.1でも取り組まれているものの、Diabloではさらに進化する。

 「エンタープライズのQOSをWebサービスに展開することは、SOAにとって重要なもの。WS-Reliable Messagingによって要求を必ず到達させるようにし、またWS-Addressingの標準サポートも備わる」とマリノ氏。これらの効果は、マイクロソフト、IBMとの協調によって、異なるベンダー間の相互運用性に関わる。

Diabloはエンタープライズ向けの機能性アップが課題

 複雑性を少なくするために、Diabloでは単一のランタイムをサポートする。「現在では、使い勝手の良さ、開発のしやすさでWorkshopのプログラミングモデルを勧めている。しかし、J2EE APIの低いレベルや、拡張性を求める場合にはJAXRPCモデルを提言している」とマリノ氏。Diabloではこの2つの側面をひとつにし、より高いレベルのフレームワークとすることが可能だ。開発者への選択肢として提供する。

 さらに、プログラミングモデルをWebサービス中心に進める点が挙げられた。オーサリングモデル全体は、JSR 175あるいは181のJavaアノテーションベース標準としていく(「アノテーション」は、メタデータを記述可能とする言語仕様のこと)。J2EEサポート開発の現状は、EJBを利用しなければならず場合によっては予想以上の開発時間を要する。しかも工夫も必要だ。これらを軽減すべく、基本的には簡単なJavaオブジェクト、あるいはクラスを書くことでアノテーション指定を行えばよくなる。

Diabloでサポートする標準化テクノロジー

 「EJBの複雑性を軽減できる。Reliable Messagingを使いたいという場合には、アノテーションで扱うことでデプロイメントディスクリプタなども考えなくてよくなる」とマリノ氏。

 また、BEA Workshopには「JWS」の概念があるが、これはJSR 175、181の予兆だとマリノ氏は言い、BEAの企業戦略には独自仕様を標準化するという考えがあると強調する。イノベーションを標準展開するBEAの狙いだ。

 さまざまなオーサリングモデルをWebサービスの中でサポートすることも目的だ。ユーザーによっては、すでにJavaコンポーネントやEJBも所有しており、新たにWebサービスとして展開したい場合に有効だと語る。反対に、.NETやWebLogicの相互運用優先という理由から、まずはWSDLで始めるアプローチも可能だ。この中間もあり、Javaコードが手元にあってWSDLを組み合わせる、といったことも考えられるという。

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