Java開発環境のトレンドには、ビジネスユーザーの抱え込みがある。複雑さを見えなくすべきと、IBMはRationalブランドでJavaの難解さを払拭する狙いだ。
Javaアプリケーション開発環境は、どこへ向かっているのか? 米IBMフェローのグラディ・ブーチ氏が語るように、OS、さらにはミドルウェアのコモディティ化を見据えれば、ビジネス(サービス)がいっそう重視される。開発者以外のビジネスユーザーがWeb情報をダイナミックに扱えることが必至だ。それは、Excelのマクロ操作のように……。
IBMソフトウェアはSOAによる堅牢性を背景に、開発環境へ新たにブランディングし、幅広い層へとアピールし始めた。
「IBM Rational Software Development Conferance」開催初日の7日、基調講演前半には、日本アイ・ビー・エム、エバンジェリストの藤井智弘氏、米持幸寿氏、Rationalブランド・マネージャー渡辺 隆氏が登壇し、アプリケーション開発ソフトウェアのブランドとして、「Rational」が中核となることが発表された。後半は、ブーチ氏がIBMの歴史とソフトウェアの過去、現在、未来を語った(関連記事)。
渡辺氏からはビジネス駆動型開発の意義も示され、SDPテクニカル・エバンジェリストの藤井氏は、Rationalを国内カンファレンスで開催できることに興奮を隠せない、と自らコメントした。
米持氏からは、RWD上で天気予報WebサービスをWebページに追加する例を実演し、Rational Web Developerを通称「RWD」、Rational Application Developerを通称「RAD」と呼ぶとし、従来からのシフトを来場者へ印象づけた。
藤井氏から米持氏の講演内デモでポイントとなったのは、UML 2.0サポートとモデリングの容易さ、そしてJSF(Java Server Faces)サポートの相乗により、ウィザードからWebサービス追加(変更)がほぼ属性(パラメータ)入力のみで実現可能な点だ。
ビジネスユーザーもターゲットとする、Atlanticの優位さが強調された。
なお、既報のようにRational(Atlantic)はEclipse Platform(Eclipse 3.0)がベースとなっており、同日の別講演セッションでは、Eclipseのメタデータ扱いに関わるEclipseのモデリングフレームワーク「EMF」(Eclipse Modeling Framework)や、プラグイン開発手法なども披露された(関連特集)。いずれのセッションも満席だ。
一方、開発ソフトウェア以外のアプリケーションサーバソフト(WebSphere Application Server V6)には、WebSphereブランドが継承され、詳細は未定なもののAtlanticのコードネームが取れる頃には最終編成が明らかとなるだろう。
すでにIBMソフトウェアでは、Rational Rose XDEなど、モデリングに長けたソフトウェア群がラインアップされており、開発ツールをRationalブランドへと統合するのはWebSphereブランド消失ではない。あくまでも開発ブランドとして広く定着させることが狙いという。
なお、既報のようにWebSphere Application Server V6では、ESB(Enterprise Service Bus)実装が大きなポイントとなっている。ESBは、SOA実現のキーであると山下氏は語り、非同期通信の具体化と、より堅牢さを追求するSOAが現実味を帯びてきた。
今回の製品からはJ2EE 1.4に対応したこともトピックのひとつだ。
今カンファレンスでもAtlanticの詳細な販売スケジュールは公表されなかった。米国リリースとの関係もあるが、デモで使われたベータ版の存在からも、年内登場は確かと思われる。
IBM Rational Software Development Conferanceでは、8日(金)まで2日間で50を超すセッションが組まれており、オンデマンドビジネスをキーワードとし、IBMソフトウェアのSOAへの取り組み、これを支えるJ2EE、Eclipse Platformのノウハウが8日にも披露される。
7日の会場模様は、関係者も苦笑するほどの混み具合であり、注目度の高さがうかがえた。
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