BI導入の是非を問う時期は過ぎた――ガートナーの堀内氏Interview(2/2 ページ)

» 2005年03月29日 16時27分 公開
[聞き手:怒賀新也,ITmedia]
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堀内 各企業によって事情は異なりますが、幾つかの典型的なアイデアはあります。1つは、財務担当者が中心となってBIを導入する方法です。財務分野は、分析する事柄がさまざまあるため、利用のニーズがもともと高いという状況があります。そのため、まず財務担当者が使ってみて、それをコアに全社的な取り組みとしてBI導入を考えるわけです。実際に、会計パッケージのBI機能を最初に利用する企業も多いことからも、ある程度裏付けられています。

 また、流通業界などでは、POSにより日々蓄積しているデータがあります。支店別売上高、季節要因などのデータとほかの情報を併せて、顧客の動向を把握するといった取り組みを、ある程度トップダウンのアプローチで行うというのも1つの方法論と言えます。

 いずれにしても、重要なのは、BIを導入する上で目的をはっきりさせることにあります。BIの利用につまずいているケースの多くは、機能を使いこなせないことではなく、そもそも、何を分析するべきかをユーザーが分かっていない場合も多いのです。

ITmedia 指導することはできますか?

堀内 もちろん可能です。新入社員が研修で名刺交換のやり方を教わるように、BIも上手に利用方法を指導すれば状況は変わると考えられます。

 そもそも、BI導入で「解が見つかる」という考えは捨てるべきです。BIはあくまでも、人がデータ分析を試行錯誤して行い、何かを見つける作業において、ネタを提供するだけのものと考えたほうがいい。「Excelなら使える」という人なら、まずはExcelと同じレベルでBIツールを使えばいいわけです。

ITmedia 電気機器メーカーのパイオニアは、BI導入プロジェクトを「戦闘」と呼び、社内で要件をまとめることが難しいと話しています。また、経営者レベルの意思決定は人がやることであるため、特にBIツールを使う必要がないという結論になったといいます。BIが「経営のコクピット化」などと表現されることを考えると、理想論からは外れる意見という気がします。

堀内 意思決定は人間がやること、という意見には同意できます。ただ、そのためにデータを集めてくる作業を、人間がすべて偏りなくできるかは疑問です。データにアクセスする直前の段階までは、ある程度自動化した形で集めた方が、客観的なデータ利用が可能になると考えます。

ITmedia 現在、多くのエンタープライズアプリケーションベンダーは、ERPの導入効果がパッとしなかったとしても、BIにより、トータルの投資効果を引き上げることができるとアピールしています。

堀内 それはある意味で正しいかもしれませんが、実際には、BIの投資効果の方がパッとしないのが現状といえます。それは、業務システムの中でのBIの位置づけが曖昧であることとも関係しています。BIは業務と一体であり、「IT」として導入している限り、成功は難しいかもしれません。導入コンサルタントおよび現場のユーザーが、BIツールをうまく実装していくために、業務に成熟していることが必要といえます。



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