結論を言えば、企業の多くはやはり、IT投資が企業価値向上に「直接」は貢献しないと考えているようだ。ITを活用したオペレーションの改革の代表例と言われるSCM改革においても、計画頻度の変更、顧客別のCS(顧客満足度)レベルの見直し、生産計画の作成ルールの簡易化などを図れば、ITを全面導入せずとも、実際には、業務プロセスを見直すだけで十分な効果が見込めたのではないかという反省がある。特に、IT投資の大きな比重を占めた計画系エンジンについて、本当に自社の業務改善に必要だったのかを疑問視する例が多く見受けられるのである。
こうして、企業は、ITではなく、オペレーションの構築そのものを最重視するようになっていった。もちろん、先進的なITによって、まったく新しいオペレーションが切り開かれるということはある。また、新しいアプリケーションが新しいオペレーションのイメージを触発することがあるのも事実だ。だが逆に、ITのみでオペレーションが成立することは考えられない。あくまでも、ITが、人材や設備などと同様に、基盤としての役割を果たした上で、実現されるオペレーションこそが大事なのだ。
だが、筆者はここで、決してIT不要論を展開しているわけではない。オペレーションの基盤としてのITに、これまで以上に価値を見出すようになってきているということだ。(図2)ただしITを適用の仕方、そして投資については、冷静に検証がなされていくことになる。
今後は、投資対効果の算定を行う場合にも、IT投資単体での算定は減っていく。一方、オペレーション構築における投資対効果の算定がますます一般化していき、ITに対する投資は、オペレーションへの投資における構成要素の1つという扱いになっていくと考える。
次回は、IT投資への今後の展望について解説する。
大野 隆司(ヘッドストロング・ジャパン プリンシパル)
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