総論2:SEの生命線は顧客満足思考ユニクロの業務改革に見る(3/3 ページ)

» 2005年04月26日 17時42分 公開
[怒賀新也,ITmedia]
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 Retek導入による業務改革を指揮し、成功させた同社の常務取締役、堂前宣夫氏は、再三にわたって同じ言葉を繰り返す。

 「“いつでもどこでもだれでも着られるファッション性のある高品質のベイシックカジュアルを、市場最低価格で継続的に提供する”という経営戦略を、どんな時もぶらさないように心がけた」(堂前氏)

堂前氏

 そして、この経営戦略を実行するために、商品の企画から販売まで自社で行う「製造小売業」化、製販を直結させるSCMの導入などに踏み切った。つまり、経営戦略からブレークダウンする形で、システム化までのすべての作業を行っていったのだ。

 同社のシステム化における具体的な課題は、たとえば、商品の色やサイズ別の欠品率の改善や、生産リードタイムを1.5カ月以内にすることなどさまざま。堂前氏は、これらのビジネス要件に対応するために、システム部門を「業務システム部」と位置づけた。情報システム部やIT部門という呼び方そのものが、仕事の幅を無用に狭めてしまうという考えからだ。

 「言葉1つの選び方で違ってくる」(同氏)

 システム投資効果の前に、業績数値目標の達成、事業成功、全社最適という思考様式を持つことを徹底して心掛けたとしている。

システム部門の役割

 同社では、システム部門の役割について、「経営戦略を実務に落とし込むことが仕事」と位置づけた。ここでは、単なる「業務のシステム化」では不足しているという。1つ1つの商品計画を積み上げたとしても、全体からみるとバランスが取れない場合があるからだとする。しばしばシステム構築が建築にたとえられるのと同様に、「全体観からシステムを設計するアーキテクト思考が必要だった」(同氏)としている。

 堂前氏は、システム部門のリーダー像について次のような条件を挙げる。

 まず、自社の事業戦略や業務システム戦略、つまり、自社が何を強くしていくことで市場競争に勝てるかを本質的に理解していること。また、事業戦略や業務システム戦略を、日常の業務オペレーションに詳細に落とし込むための、現実業務や情報システムに対する知識や理解があること。

 そして、トップダウンですべての業務設計を意思決定できるレベルまで、上記2つの要件を自分のモノにしていること。さらに、実行推進リーダーシップが突き抜けており、「だれも決めないなら俺が決める」といったマインドがほしいと述べた。

 ファーストリテイリングの例から分かることは、顧客(同社の場合は自社だが)思考の大切さだ。それがなければ、そもそも、業務システム部という位置づけも生まれなかったかもしれない。企業が情報システムを構築する限り必ず目的があり、作ること自体が目的になってはならないという当たり前のことを再認識することになる。

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