このPMOがどういう人材で構成されるかということだが、IT部門出身の人間を中心に構成されるということは正直考えにくい。確かに、従来システム部門を中心としてプロジェクトが実行されてきた理由のひとつとして、プロジェクト・マネジメントという考えや手法、さらにはツールなどに「近い」「馴染んでいる」のがシステム部門であったということがあげられる。それがIT部門の人間にとってアドバンテージであることは確かだが、先にあげた教育などにより、オペレーション部門においてもプロジェクト・マネジメントの知識・スキルの基礎を身につけた人材は多く存在することになってくる。
また、今後はオペレーションを構築することこそが重要であるため、システムだけでなく、業務、組織、人材、設備、顧客などについての知見を有していることが必要となる。システム領域についての知見だけでは、決して大きなアドバンテージとは言えない。無論、システムに関してのマネジメントの知見は必要であるので、応分の担当領域は定義されるだろう。
さらに言えば、今後はオフショアの進展により、システムの設計・開発・運用・保守などは外部の資源によって実行されることとなる。このときに(言葉の問題も含めて)、従来のシステム調達においてのマネジメント経験が、本当に有効であるかというと、疑問も多い。
先に述べたEAにおけるテクノロジーのアーキテクチャにおいて、これからは経営層からのコスト削減の要望がIT部門に対して従来よりダイレクトに提示されてくることになる。
テクノロジー以外のアーキテクチャの最適化については、やはりオペレーションの構築に強く依存することになるため、オペレーションの構築のプロジェクトが主導していくことになる。
反面テクノロジ・アーキテクチャは、オペレーションからの規定を受けにくい部分が残されるため、オペレーションとはある程度独立してITコスト削減の取り組みを進めることが可能である。よって、テクノロジ・アーキテクチャに関するCapabilityをIT部門に整備しておく必要性が、現状よりも圧倒的に高くなっていく。
ただし、実装についてはオフショアなどで実施されることになるため、ここで求められてくるのはテクノロジ・アーキテクチャ領域の詳細設計や製品仕様などの知識というものではなく、テクノロジ・アーキテクチャの革新による財務パフォーマンス改善のプランや、そのためのグランドデザインを実施していくことなどが挙げられる。
現状のこの領域を担当しているSEをそのまま充当といったかたちでは、スキル・経験面でミスマッチが発生することが多いだろう。
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