「経営戦略としてのSOAとは何なのか?」──この連載「成功するSOA、失敗するSOA」では、SOAでビジネスを変革するヒントを紹介していきます(日本BEAシステムズ著「ビジネスはSOAで変革する」からの抜粋です)。
エンジニアは総じて頑固です。特に、一度成功を体験したエンジニアは、輪をかけて頑固です。
エンジニアと話していると「SOAでやろうとしていることはEAIと同じである」とか「Webサービスは成熟していないからSOAは無理だ」といい切り、断固としてその説を曲げないという場面に遭遇することがあります。この頑固さが招く誤解が「SOA不要論」となり、SOA推進派に対する抵抗勢力になることがあります。
一般に抵抗勢力とは、技術者にかぎらず、かつて「成功した人間」がなるものです。また老人は頑固であるといわれますが、老人が頑固なのではなく、「成功した老人」が頑固なのです。某政党など、その典型例です。
成功した人間は、実績を見れば、優秀で成功を手繰り寄せる能力があると思われがちですが、実は過去の成功に固執するあまり、柔軟性を欠くことがあります。過去の成功にこだわり、路線変更がままならず経営破たんを招いたダイエーなども、その一例といえるでしょう。
メインフレームやクライアント/サーバシステムによるシステム化で、会社の高度成長を牽引した自負を持つエンジニアは社内に少なからず存在します。彼らは、成功者であるがゆえに、自身が抵抗勢力になっていることにすら、気が付きません。
SOAは、技術者よりも経営サイドに近い人ほど、その考え方や方法論に共感しやすい傾向があります。最終的には、会社の行く末を左右する経営者がSOAに舵を切るならば、抵抗勢力も結果的には従わざるを得なくなるでしょう。
ただし、現場の実力者の協力を得られないまま、SOAを推進するのはやはり問題です。
その問題を回避するためには、経営層に事業戦略や技術動向を俯瞰的にとらえられるCIOを配置し、現場のエンジニアと経営層の間のギャップを吸収するのがベストです。肝心の経営層が「技術は分からない」「苦手」などといって、抵抗勢力から逃げてしまっていたらSOAは失敗します。
そもそもシステム部門は「事業部門の要件定義を聞いてそれをシステムに落とし込むこと」が仕事ではありません。こんなことをやり続けていたのでは、時間とお金がいくらあっても足りません。
ビジネスの変化が激しく、誰もどのようなシステムを開発すべきか先を読めない中、経営戦略や技術動向を正しく把握し、どの事業部門からどういう要望が出たとしても、即座に対応できるインフラや環境を整備しておくことが、これからのシステム部門がやるべき最も重要な仕事なのではないでしょうか
「成功するSOA、失敗するSOA」
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