「経営戦略としてのSOAとは何なのか?」──この連載「成功するSOA、失敗するSOA」では、SOAでビジネスを変革するヒントを紹介していきます(日本BEAシステムズ著「ビジネスはSOAで変革する」からの抜粋です)。
SOAは現代における普遍の経営テーマではありますが、残念ながら、その効果は目に見えて表れる企業と、そうではない企業が存在します。
そもそもSOAが実現するのは、ビジネスの変化に合わせて、素早く柔軟にシステムを開発し、ビジネスをサポートできるようにすることです。これは、システムを再利用することで可能になります。
その効果は「競合他社に先んじて新商品・新サービスを市場に投入できること」と「他社の新サービスにタイムラグなく追いつき、追い越せること」の2つです。
この2つのメリットは、日夜、熾烈な市場競争が繰り広げられている業界において、最大の効果を発揮します。
例えば、移動体通信、遠距離通信、ブロードバンドサービス、インターネットサービスプロバイダー、オンライン証券、金融、流通、家電、電子機器、自動車など、販売チャネルが多角化し、価格競争が激しく、競合が5社以上ある業界がこれに当たります。
特に、ブロードバンドサービス業界は、SOAが最も必要な業界のひとつです。数年前にADSLが登場したかと思えば、爆発的に市場が拡大し、数カ月単位で回線速度がどんどん速くなり、価格も値下げ競争が激化。そのうえ、頻繁なキャンペーンや販売形態の多様化、業務プロセスの複雑化が進み、市場競争は熾烈のひと言に尽きます。さらに、最近では光ファイバーがアイテムに加わり、VoD(ビデオ・オン・デマンド)やIP電話など、サービスメニューは増え続ける一方です。
新サービスの開発コストや営業コストは膨らむばかりなのに、価格競争の激化で収益は目減りし続けるという悪循環。いかにしてコストをかけずに、素早く新サービスを開発するかが、競争優位を築く最も重要な経営テーマです。
さて、これに対しSOAの効果が期待できない業種とは、いったい何でしょう。
簡単にいえば、先ほどの話と対極に位置する業界、つまり、市場が大きく変化しない業界です。ここでは、具体的な業種の言明は避けますが、市場を独占的または寡占的に支配している組織、変化しないことに価値のある業種などです。
こういった業種では、何も事業戦略とITが素早く同期する必要はありません。じっくり計画を練り、時間をかけてコツコツとシステムを開発すればいいわけですから、SOAに取り組んでもあまりメリットはありません。
同じように、非常に規模が小さく、アプリケーションを再利用するより新規開発したほうが早いスモールビジネスの場合も、SOAの効果は期待できません。
「成功するSOA、失敗するSOA」
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