「経営戦略としてのSOAとは何なのか?」──この連載「成功するSOA、失敗するSOA」では、SOAでビジネスを変革するヒントを紹介していきます(日本BEAシステムズ著「ビジネスはSOAで変革する」からの抜粋です)。
SOAは、次世代のビジネスを左右するキーワードであることは疑う余地がありません。
それゆえに、良しあしはともかく、SOAを冠した商売があちこちで生まれるのは、やむを得ないことかもしれません。ただ、間違ったSOAビジネスにだけはひっかからないよう、十分に気を付けなくてはなりません。
あるベンダーは、「SOAはビジネスコンサルティングである!」「ビジネスコンサルティングをすることが、SOAの始まりです」と声高に叫んでいます。
一方、あるベンダーは、「SOAは製品である!」「異機種間システムをつなぐ製品がSOAです」と断言しています。
どちらもある側面からいえば間違ってはいませんが、それが「SOAそのものだ」と断言することには問題があります。
ここではまず、「SOAはビジネスコンサルティングである!」というベンダーの考え方から探ってみることにしましょう。
とあるベンダーにビジネスコンサルティングを依頼すると、DFD(Data Flow Diagram:データ・フロー・ダイアグラム)という絵が出てきます。また、UMLという言語で書いた仕様書のようなものが出てくることもあります。
でも、それができたからといって、いったい何になるというのでしょう。その絵さえあればアプリケーションの再利用が進むのかといえば、そうではありません。
後日談ですが、そのベンダーがビジネスコンサルティングに基づいて開発したシステムの再利用単位が「サブルーチン」だったという笑えない話があります。「サービス」はどこに行ったのでしょうか?
ビジネスコンサルティングから開発までの方法論が美しくて、理論的に正しく見えても、実現できなければ絵に描いた餅にすぎません。それでは変化に対応できる企業へ体質改善できるはずはありません。
SOAは、アプリケーションを再利用し、事業戦略に基づく新商品・新サービスをいち早く市場に送り出せて、初めて「実現できた」といえます。ですから、ビジネスコンサルティング後に、現場でサービス統合基盤を使用し、既存システムからサービスを切り出し、再利用できるよう検証しなくては、何の効力も発揮しません。絵だけ書くのならば、SOAは10年前に完成していました。
さらにいうなら、SOAの実現には、ビジネスコンサルティングよりも、むしろ「SOAのコンサルティング」が必要です。SOAのコンサルティングとは、現時点におけるその企業のSOA実現レベルを明確にすることです。
何を始めるにも、まず自分がどのレベルにいるのか分からないと対策を立てられません。
例えば、体重を減らしたり、体脂肪を減らしたり、筋力をアップするために、フィットネスクラブに入会したとします。どんなクラブに入ったとしても、初めにやることは今のBMI、体脂肪率、筋力量を測定することです。現状を把握したら、その数値と目標値とのギャップを明確化し、トレーニングプランを立てるはずです。後は、そのプランに則ってトレーニングを進め、定期的に効果を測定し、目標に到達するためのトレーニングを見直し、トレーニングを繰り返していくわけです。
SOAの実現も同じです。現状を分析して、SOAができていないからSOAをやろうということで、いきなり「これがゴールです」と文書だけを渡されても、どうすることもできません。
まず、SOAに関してどのレベルにあるのかを測り、レベルに応じて短期的な目標と中長期的な目標を設定して、プランを練り、システムを実装しながら、少しずつゴールへ近づくことが必要です。
結論──SOAはビジネスコンサルティングだけで実現するにあらず。絵に描いた餅は食えない。
「成功するSOA、失敗するSOA」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.