「経営戦略としてのSOAとは何なのか?」──この連載「成功するSOA、失敗するSOA」では、SOAでビジネスを変革するヒントを紹介していきます(日本BEAシステムズ著「ビジネスはSOAで変革する」からの抜粋です)。
「ユーザーにビジネス要件を聞いて、その通りつくればよい」というシステム部門の考え方は100%間違っています。現場に言われた通りつくるのであれば、システムインテグレーターに丸投げ(アウトソーシング)すればよいので、システム部門は不要です。
最近、「アウトソーシングは失敗だった」という話をよく聞きます。その理由は、社外に開発を丸投げしてしまうと、社内の企画力と技術力が空洞化してしまうからです。計算上、アウトソーシングは10年間利用するとコストを大幅に下げられるといいますが、その大前提は10年間システムが変わらないことです。
ところが、変わらないシステムなど存在しませんから、追加開発すると、請負業者の作業が増え、別コストが発生し、永遠にコストが下がることはありません。
アメリカで成功している会社は、IT部門における企画や技術戦略を決める部門を必ず社内に持っています。この中核的な機能のアウトソーシングなどは行いません。システムを一括で請け負って開発するシステムインテグレーターというのは、日本で特に発展したサービスで、アメリカには数えるほどしか存在しません。
要求仕様だけ決めて丸投げすることが間違いであるもうひとつの理由は、発注先のベンダーやシステムインテグレーターが、ユーザー企業のアーキテクチャーをユーザー企業に代わって決める立場にないからです。
ユーザー企業にとって重要なアーキテクチャーを決めるのはユーザ企業自身であるべきです。
「要求仕様が決まった」ときに、「今開発する方法と、10年前、10年後で、その技術や方法論がどう変わってくるか」という全体を見通した判断は、技術戦略を担う社内部門がやるべきことであり、外注先に判断させるべきことではありません。将来の事業戦略をスムーズに実現するために、新しい技術をどう使うかは、非常に重要な経営課題です。
しかし、ベンダーやシステムインテグレーターは、普通はそこまでは関与しません。あくまで要求仕様に基づいて開発するだけです。どの技術を使うかは、ベンダーやシステムインテグレーターに任されています。
こんなことを続けていたのでは、社内システムの部分最適化が進むばかりで、全体最適などできるはずがありません。
会社の将来を考えるなら、丸投げはやめましょう。
これからは、社内の責任者が最新技術動向を把握し、新規で開発するシステムを、将来どのように「再利用」するかを考えてから、設計やプログラミングなど個別の作業だけを外注するようにしましょう。
「どんな技術を使い、どういう技術基盤の上に何をつくり、どう再利用するか」を考えるのは、経営を熟知している人間がやるべきです。
丸投げを続けるのであれば、SOAは失敗するでしょう。
「成功するSOA、失敗するSOA」
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