「日本企業再生のカギは“転換”」と日本オラクルの新宅社長Interview

昨年夏に政府と日銀が景気の「踊り場」からの脱却を宣言して以降、日本の企業を取り巻く環境は明らかに好転してきた。新年から「ターンアラウンド」を掲げる同社の新宅正明社長に話を聞いた。

» 2006年01月01日 07時29分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 昨年夏に政府と日銀が景気の「踊り場」からの脱却を宣言して以降、日本の企業を取り巻く環境は明らかに好転してきた。2003年6月、減収減益に終止符を打つべく、3カ年の中期経営計画をスタートさせた日本オラクルも、最終年にあたる今年度は大幅な増収増益が見込まれている。新年から「ターンアラウンド」(Trunaround:転換、業績好転、企業再生)を掲げる同社の新宅正明社長に話を聞いた。

中期経営計画で日本オラクルの「転換」をリードした新宅社長

ITmedia 3年前に打ち出した3カ年中期経営計画も最終年です。総括していただけますか。

新宅 2004年度(2003年6月〜2004年5月)から始まった中期経営計画では、われわれの身の丈やマーケットの状況を考え、縮退しながら経営の舵取りをどうすべきか、ということが重要でした。そこでの目標はすでに達成でき、その意味では及第点だと考えています。

 昨年夏に政府と日銀が景気の「踊り場」からの脱却を宣言して以降、世界的に見て出遅れ感のあった日本のIT市場でも好転の兆しが見えてきました。しかし、企業を取り巻く環境の好転が従来型の設備投資を伴うのかどうかは疑問です。今回は、ほかの国の設備投資を生かした環境の好転ともいえます。従来型のIT投資の回復は、国内トランザクションが大きく伸びているところ、例えば、携帯電話事業者や証券会社のようなところでなければ、見込めないでしょう。

ITmedia 従来型のIT投資が見込めないとなると、どうなるのでしょうか。

新宅 2つの転換がカギを握るでしょう。

 一つは「経営の質の転換」です。日本版SOX法(企業改革法)によって日本の企業も行動や考え方を転換することが求められます。経営の質の転換はITの転換を伴います。これがないと企業の価値は創造できないし、高められないということになるでしょう。

 もう一つは、グローバルな市場で生き抜くための「ビジネスモデルの転換」です。世界をリードする自動車業界や家電業界では、従来の製販体制を見直し、水平型の分業から垂直型の統合へモデルの転換が始まっています。単に製品を作って人に売ってもらうのではなく、マーケットを見なければ、グローバル市場で永続的に勝ち抜くことはできません。エンドユーザーをどうつかむかが重要であり、それを人に委ねることはできなくなっています。企業は、Webやコールセンターといった、エンドユーザーに近いところの再整備を迫られるでしょう。

 現在、いったん萎(な)えてしまった企業の再生がさまざまなところで取り組まれていますが、その対象となっているのは、コンピタンスやインフラがあり、戦略と経営の質が良くなれば再び収益を上げる可能性のある企業です。そうした企業が転換を果たし、再生することが、日本経済の大きな転換を具体的に示す成功要因になると思います。

 そのとき重要になってくるのは、カネやヒトではなく、システムです。そうした企業が舵取りを誤った一つの原因は、経営が可視化できていなかったり、コンプライアンス(法令順守)が正しく行われていなかったからです。今後、企業はガバナンス(内部統制)の強化を迫られることになりますが、新しい制度を前向きにとらえれば、企業は再生できるし、逆に経営者が対応を怠れば、同じ道を歩むことになるでしょう。

 日本オラクルは3月の「Oracle OpenWorld Tokyo 2006」を皮切りに「ターンアラウンド・ジャパン」という新たなテーマに掲げていきます。2006年は日本経済が上向いていくきっかけの年になればいいと願っています。

積極投資で売り上げ拡大

ITmedia 日本企業の再生のために日本オラクルが果たす役割を教えてください。

新宅 経営の可視化や内部統制のためには、企業活動のためのインフラストラクチャー、つまりネットワークであったり、情報や業務プロセスを載せたアプリケーションの再生が必要になります。今のモデルがダメなら作り直す必要があります。日本オラクルでは、ばらばらの部品ではなく、ますますインフラ化が進むIT全体のアーキテクチャーを整理しながら、永続的に使えるソフトウェアを提供していきます。

 企業の投資動向も変わるとみています。今はまだ、ITのライフサイクル全体で見ると比率の小さなハードウェアの投資に目が奪われてしまっていますが、主役はソフトウェアやアプリケーションへと交代するでしょう。ライフサイクル全体のコストを最適化していくことが重要になるからです。運用管理サービスの「Oracle On Demand」でも貢献できると思います。

 かといってコスト削減一辺倒でもありません。例えば、企業が攻めに転じる際のCRMでもさまざまな選択肢を用意しています。PeopleSoftやSiebelが加わり、総合エンタープライズソフトウェアのベンダーとして統合されたソリューションを提供していきます。

 幸い、アプリケーション事業は極めて好調です。そこに注力すればマーケットはあるということです。日本オラクル自身も積極的な投資を行い、ライセンス売り上げを高めていくことにこだわりたいと考えています。

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