データ保護、災害対策、法規制……困難を極めるデータマネジメントへの解決策ITトレンド 〜データマネジメント編〜

増大するデータへの対応、そのデータの適切な管理――情報の活用が経営を左右する現在、データマネジメントの重要性が高まっている。そこに、災害や法規制など外部要因が絡み合い、データ管理は難しい課題として企業にのしかかってきた。企業はいま、どのようにデータマネジメントを行っていけば良いのだろうか?

» 2006年01月20日 00時00分 公開
[ITmedia]
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 企業が扱うデータの増大はとどまるところを知らない。年々倍増し続けているといわれる企業のデータに対応することだけでも大変だが、これらデータが持つ情報としての価値も高まっており、ユーザーがこれら情報を活用できる環境も整えなければ意味がない。一方、データとしての情報の価値の高まりから、データの適切な管理を求める法規制も強化される流れにある。データマネジメントは、企業の情報戦略の中でもますます重要なポジションを占めるようになってきた。

 このような流れを受けて、データを格納するストレージの重要性がかつてないほどに高まっている。企業のストレージに対する投資意欲は高まりを見せており、企業のIT投資において、2006年は60%の企業がストレージ支出を3%以上増加させ、そのうちの3分の1が6%以上投資を拡大するという調査も出されている(関連記事)。企業は、システム障害や災害からデータを確実に保護し、法規制に適切に対応できるストレージソリューションを本気で検討し始めた。

 これらデータマネジメントを取り巻く環境の変化へ柔軟に対応できるソリューションを提供する日本ヒューレット・パッカードのネットワークストレージ製品本部本部長、渡辺浩二氏に、データマネジメントをめぐる日本企業の現状と同社のビジョンを聞いた。

災害が猛威を振るった2005年、災害からデータをどう保護するのか?

ITmedia 2005年は国内外でハリケーンや地震が猛威を振るい、自然の脅威を見せつけられました。また、同時にITインフラストラクチャーの堅牢さが重要だと再認識させられた年でもありました。

渡辺 災害対策に対する意識がにわかに高まってきているのを感じます。法規制が整備され始めてきたことも背景にあります。また、データの消失や盗難が企業に甚大な被害を及ぼすことも理解されるようになりました。


写真1■日本ヒューレット・パッカード株式会社 エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 ストレージワークス製品本部 本部長 渡辺 浩二氏

ITmedia 実際に企業はどのようなディザスタリカバリーのシステムを導入しているのでしょうか。

渡辺 ストレージのディザスタリカバリーは、そのシステムが停止したとき、どのくらいの時間で復旧させなければならないのか、によってソリューションもさまざまです。ディザスタリカバリーというと、遠隔地にあるバックアップサイトのシステムが自動的に立ち上がるような大規模なものを想像されるかもしれませんが、実際にはテープにバックアップを取り、別サイトに保管するのが基本となります。それがきちんと運用できていないと、建屋を別にしたディザスタリカバリーや、東京と大阪のような遠隔地でのディザスタリカバリーは、そのためのハードウェアを導入したとしても、うまく運用できないでしょう。

 もちろんHewlett-Packard(HP)としては、どのレベルのソリューションも提供できます。しかし、重要なことは、「人」「モノ」「運用」という3つの要素が整って初めてディザスタリカバリーが機能するということです。HPでは、教育やコンサルティングを通じて、システムをどのタイミングでどのレベルまで復旧させるか、といった災害時の運用をしっかりと固め、マニュアル化するところまで支援しています。

ITmedia 教育やコンサルティングはデータに対する認識を変えていく上で重要ですね。

渡辺 その通りです。きちんとしたITインフラストラクチャーを整えようとしている企業は、データの重要度をよく理解しています。彼らは、データを守るためのハードウェアだけでなく、管理体制をどのように整えなければいけないのかについても十分な時間を使って検討しています。

世界に遅れをとるITシステムの全体最適

 そもそも、海外、例えば米国に比べると日本の災害危険度数は、10倍とも20倍といわれています。その割には、ディザスタリカバリー、災害対策の危機意識は低く、実際に導入されているシステムも遅れているのではないでしょうか。また、そのためのコンサルティングサービスの活用や管理者教育にも消極的です。

 その背景には、日本のITシステムが統合されていないことがあります。システムが縦割りの組織の中で、部門ごとに最適化されているため、どこにどんなデータがあるのか把握できていません。そうなると、ディザスタリカバリーのシステム構築や、データ保護を全社で行うことが難しくなってしまいます。つまり、ディザスタリカバリーを行う場合、その前段階でシステムが統合されていないといけません。

 そこへいくと、欧米はシステム統合が進んでいます。そのため、全社でデータをどのように保護していくかという施策をまとめやすく、ディザスタリカバリーのシステムも導入しやすいのです。

法規制が与えるストレージへの影響

ITmedia コンプライアンスへの取り組みという点でも米国が先行し、日本が後を追う構図となっています。


渡辺 国内のストレージにかかわってくる法規制は、米国と比較するとまだ十分整備されていません。例えば、米国の場合、証券取引委員会(Securities and Exchange Commission:SEC)の規則として、証券会社は電子データを何年にもわたり保存することを義務付けており、その保存には書き換えや消去ができないことが求められています。データをきちんと保持し、要求があったときには検索して証拠として提供しなければならず、それが守れなければ罰金などのペナルティーを課され、また、社会的な信用も失ってしまいます。

 今のところ日本の規制には、米国ほどの強制力はありませんので、テープにデータを移し、別の場所に保管するというのが一般的なコンプライアンス対策となっています。今後は迅速に提供するための検索が課題となるでしょう。

ITmedia 個人情報保護法もストレージに対する考え方を変えているのではないでしょうか。

渡辺 個人情報保護法も、やはり影響を及ぼしています。個人情報をきちんと管理するにも、どこにどんなデータがあるのかを把握していないと難しく、データの統合(集約)がなされていることが必要になります。ファイルサーバが散在している環境ではコントロールできません。どこにどんなデータがあるのかきちんと発見して、そのデータの運用に関する長期的な戦略を立案し、それを支えるストレージインフラストラクチャーのコンセプトをしっかり持たないと個人情報保護法には対処できません。

ITmedia 災害や法規制以外にも、企業が安心してシステムを利用していくにはデータ保護(バックアップ)が欠かせません。

渡辺 データ保護(バックアップ)というと、テープにデータを移して別サイトに移動させることをイメージするかもしれませんが、バリエーションが増えてきています。筐体内で複製し、次はそれを外のディスクに、さらにはテープに移していきます。こうした階層構造のシステムであれば、リストアなどが高速で行えます。

データマネジメントにはストレージ統合が大前提

ITmedia ディザスタリカバリーシステムを構築したり、コンプライアンスおよび個人情報保護法への対策を講じる前提として、ストレージ統合の重要性を指摘されましたが、企業はどのような手順でストレージ統合に取り組めばいいのでしょうか。

渡辺 まずは中核となる統合ストレージを導入する方法があります。「モノリシック型」と呼ばれ、大型の筐体にディスクを収納するもので、そこにすべてのデータを集約していきます。このアプローチは、SAN(Storage Area Network)の登場に伴って普及しました。HPでは、この用途に適した「HP StorageWorks XPファミリ」を提供しています(図1)。


図1■HP StorageWorks XPファミリによるストレージ統合事例

 モノリシック型では初期導入コストがかさむということもあり、その敷居を下げる「モジュラー型」が登場しています。HPでいえば、ミッドレンジの「HP StorageWorks EVAファミリ」がこれに当たります。1組のコントローラーで最大72テラバイトまで制御するモジュラー型となっていて、性能が求められるときにはコントローラーを追加し、容量が欲しいときはディスクを追加するなど、必要に応じて性能と容量を拡張していくことができます。システムごとに散在するDAS(Direct Attached Storage)のストレージ環境にSANのスイッチとハブ、ディスクアレイを必要最小限の構成で導入し、新しいディスクモジュールを追加しながら、耐用年数が過ぎたDASを除外していきます。これを繰り返していき、長期的な視野で統合を図っていくことになります(図2)。


図2■HP StorageWorks EVAファミリによるストレージ統合事例

 HPにはストレージの多彩なポートフォリオがあり、しかもハイエンド、ミッドレンジ、テープと、それぞれの製品がほぼ業界ナンバーワンクラスです。統合しようとすれば、サーバやアプリケーションを含め適材適所でハードウェアとソフトウェアが必要になりますが、ストレージ専業ベンダーでは、それが難しいのではないでしょうか。顧客のための最適な統合環境を考えると、適材適所は必須となります。

日本HPが提案するストレージソリューション

ITmedia 統合したITリソースの最適活用という視点から「仮想化」が脚光を浴びています。ストレージの仮想化に対するHPの取り組みを教えてください。

渡辺 HPは、外部環境の変化に適応できる企業として「アダプティブ・エンタープライズ」を定義し、それを支えるITインフラストラクチャーを提供していこうとしています。その目指すところは、サービスを主体としたユーティリティー化です。蛇口をひねれば水が出るようにストレージも必要な容量を必要な品質で提供できるのが理想です。これを実現するためには「仮想化」が重要な技術的要素となります。

ITmedia 必要な「品質」とはどういうことでしょうか。

渡辺 例えば、このデータは基幹データなので、バックアップが不可欠で、万一のときには30分以内に復旧してほしい、という「サービスレベル」を保証するということです。

ITmedia 競合他社もやはり「仮想化」をうたっています。HPが取り組む仮想化について教えてください。

渡辺 HP StorageWorksの仮想化モデルでは、下から物理リソースレイヤー、物理リソース管理ソフトウェアレイヤー、そして運用管理レイヤーがあります。

 最下層は物理リソースレイヤーでの仮想化です。ここではディスクやテープを仮想化します。物理的なディスクがたくさんあってもすべてまとめて1つのストレージ容量に見せることができたり、ディスクをテープに見せかけることができます。これより、稼動中でもディスクを追加して動的に構成を変えられ、スループットを上げることができます。また、テープを仮想化すると、バックアップ/リストアが高速に行えるのはもちろん、管理も容易になります。

 その上位の物理リソース管理ソフトウェアレイヤーでは、さらに異なるディスクアレイをまとめて1つのストレージプールに見せることができます。製品で言うと「HP StorageWorks XPファミリ」です。この製品の背後にさまざまなストレージを接続しても、XPとして管理することができるのです。重要なデータはXPの筐体内に置き、コピーボリュームは外部に置く、といった使い方ができます。安価なストレージを組み合わせてコストを抑えられるし、拡張性も高くなります。

 運用管理レイヤーの仮想化を実現する製品は「HP Systems Insight Manager」です。この製品は共通の管理プラットフォームの上に「ProLiant Essentials」や「Integrity Essentials」といったプラグインを組み合わせて、さらに詳細なサーバの管理が行えるようになっています。HPではこうしたプラグインのひとつとして「Storage Essentials」も用意し、ストレージに関する管理タスクごとに豊富な機能を提供しています。プロビジョニングのような構成管理の分野もあれば、Oracleデータベースを監視するアプリケーションストレージ管理の分野も幅広くカバーしており、包括的なストレージ管理機能を提供できています。

 ただ、現行のアーキテクチャーとストレージでは解決しきれない課題もあります。

ITmedia それはどういった課題でしょうか。

 例えば、短期間でのストレージシステム構築と簡素なストレージ管理です。大規模なストレージシステムとなるとシステム構成には現状2〜3カ月かかってしまいます。また、変更やメンテナンスも難しく、陳腐化した製品を別の目的に活用することも難しくなっており、管理者の負担になっています。HPでは2004年、こうした課題を解決すべく、「グリッドストレージ」というコンセプトを提唱しました。

 データ管理、運用の仕様が決まったら、標準のストレージブロックを組み合わせて構築するものです。ソフトウェアもモジュラー化し、必要なものをロードします。モジュラー化することで、必要なストレージを要求レベルに合わせタイムリーに構築できます。ハイエンドで導入したものをミッドレンジに転用することも自在になります。同じアーキテクチャーなので、スケールアウトでも管理性が損なわれることはありません。

 すでにグリッドストレージの技術を実装したアーカイブ用ストレージ製品である「HP StorageWorks Reference Information Storage System(RISS)」を市場に投入していますが、将来はブレードを活用したものや、ディスクそのものにCPUとキャッシュが搭載されたインテリジェントなディスクが登場し、それらを組み合わせられるようになるでしょう。

 ここでも重要なことは、HPが、自社独自の技術ではなく、標準技術を活用しようという点です。

本企画「ITトレンド〜データマネジメント編」では、今後さらにデータマネジメントの現状と課題を掘り下げ、より具体的に解説していく。次回は「コンプライアンス」を取り上げる(1月31日公開予定)。

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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年6月30日