データ保護の基本はバックアップにあり! あらゆるデータ保護レベルに対応するHPITトレンド 〜データマネジメント編〜

データ保護はコンプライアンス対応や事業継続性の確保のための基本だ。あらゆるユーザーが等しく抱えているこれらの課題に対応するため、日本ヒューレット・パッカードでは幅広いデータ保護ソリューションをラインアップし、適材適所の対応を可能にしている。データ保護ソリューションについて、日本ヒューレット・パッカードの菅澤氏、大内氏に聞いた。

» 2006年05月22日 14時00分 公開
[ITmedia]
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日本HP エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 ストレージワークス製品本部 ビジネス開発部 菅澤 由恭氏

 動画や電子メールの利用が拡大し、従来は紙ベースで扱われていた文書や医療データなどさまざまな情報が電子化されつつある。数年前のデータファイルの多くは数Kバイト程度で、仮に失われても「作り直せば大丈夫」とか「紙が保存してあるから問題ない」といった状況だったが、現在ではファイルのサイズが増大し、情報量は格段に増え、ファイル自体が持つ価値も高まっている。データが失われた際の損失は、数年前に比較して飛躍的に大きくなった。

 現在では、HDDの価格が低下していることから、バックアップを含めたシステムをすべてオンラインディスクのみで構成する例も増えている。また、大規模な自然災害などでサイト全体が使用不能になる「サイトディザスタ」のリスクに対応するためには、遠隔地にバックアップを保存することが不可欠にもなる。しかし、レプリケーション先の予備サイトを用意するには当然、多額のコストが掛る。このような高価なシステムを構築できるユーザーは一握りに限られる。

HP StorageWorksデータ保護ソリューション HP StorageWorksデータ保護ソリューションポートフォリオ

 日本ヒューレット・パッカード(HP)ではこうした手法を否定はしないが、あくまでもユーザーがその構成のコストとリスクを正しく理解した上で選択した場合の話だと指摘する。HPでは、ユーザーのシステム規模や保護レベルに応じた幅広いデータ保護ソリューションを幅広くそろえており、適切なソリューションを提供している。


用途に応じた適材適所のソリューション

日本HP エンタープライズストレージ・サーバー統括本部 ストレージ・ワークス製品本部 プロダクトマーケティング部 担当マネージャ 大内 剛氏

 ハイエンドの領域では「瞬時にデータをレプリケーションする」という需要が強い。そのため、これには同社のディスクアレイ製品が対応する。遠隔地のサイトへリモートレプリケーションすることで、災害対策を含めたデータ保護を可能にしようというものだ。

 最近はこのようなディスクを利用したバックアップに注目が高まっている。しかし、HPでは「ディスクバックアップ」と呼ぶのではなく、あえて「2ステージバックアップ」としている。これは、ディスクを最終的なバックアップの保管メディアとして利用した場合には、サイトディザスタなどの際にすべてを喪失する可能性が考えられるからだ。保護のためにはオフラインでの保管も必要であり、このための安価なソリューションとしては現在でもテープを利用するのが効果的だ。そのため、HPでは、テープ自体を否定するのではなく、ディスクバックアップはテープに保管する前段階と位置付け、リスクとコストを最適化した提案を行っている。

・仮想テープライブラリ

 また現在、ディスクバックアップの分野で注目されている技術に「仮想テープライブラリ」というものがある。従来SAN環境で利用していたテープドライブをディスク装置上に仮想的に構成し、ディスク装置のメリットを活かしたテープライブラリとして利用できる。最大のメリットは、バックアップソフトウェアからは従来のテープドライブと同じように見えるため、既存のバックアップ環境や作業フローの構築は従来のスキルで対応できる点だ。もちろん、仮想テープライブラリに保存されたバックアップデータはシステムの運用と切り離して物理的なテープにコピーして保管し、システムの運用効率を下げることなく高信頼性のデータ保護を提供することが可能となる。

仮想テープとD2D 仮想テープとディスクtoディスク(D2D)バックアップの違い

 また物理的なテープドライブでは、特定のサーバからのバックアップジョブを処理している間はほかのジョブを受け付けることができない。しかし仮想テープはその実態はディスクであるため、物理的なテープドライブの数に制約されず、同時に複数のジョブを処理することができる。このため、SANの帯域を有効に活用し、バックアップに要する時間を大幅に短縮できるというメリットもある。物理テープで同様の効果を出すためには高性能なテープドライブの追加投資が必要になるため、仮想テープのコストメリットは高い。また、テープ製品特有のメディアエラーのリスク回避やテープメディアの節約などのメリットも見逃せない。

 VLS6000シリーズ 仮想テープライブラリ「StorageWorks 6000 Virtual Library System」

 HPでは、この仮想テープライブラリとして「StorageWorks 6000 Virtual Library System」(VLS6000シリーズ)をラインアップ。テープライブラリをエミュレーションするソフトウェアを搭載したサーバとディスクで構成され、容量に応じたモデル3種類を用意している。

・Data Protection Storage Server

 一方、中小規模のシステム環境に向けては、NASを活用したソリューションもそろえている。2005年に発表した「HP ProLiant Data Protection Storage Server」(DPSS)は、同社のIAサーバ「HP ProLiant」をベースにNAS OSとして「Microsoft Storage Server 2003」を採用し、管理ソフトウェア「Microsoft System Center Data Protection Manager 2006」(DPM)を組み合わせたバックアップ専用アプライアンスである。Active Directory環境下に分散したWindowsファイルサーバのバックアップの統合化を可能にした製品で、適用範囲は限定されるものの、Windowsファイルサーバの乱立した環境ではデータ保護の作業負荷を低減させることが可能だ。

 ファイルサーバのスナップショットを最大64世代にわたって保存できるほか、エンドユーザーがクライアントPCの「Windowsエクスプローラ」から容易に自分でデータを復元することができ、リカバリにおける運用管理の負担も大幅に低減される。ソフトウェアにはマイクロソフトの技術を利用しているが、同社と密接したアライアンス関係を持つHPがワンストップでサポートを提供するため、利用上の不安もない。

HP Integrity SuperdomeからHP ProLiantまで対応するバックアップソフト

 HPが提供するバックアップソフト「HP OpenView Storage Data Protector」は、HP-UXサーバで標準的に使用されていた「HP OpenView OmniBack II」を起源とした製品である。現在はマルチベンダ環境に対応し、ProLiantとの組み合わせでも広く利用されている。

 HP OpenView Storage Data Protector モジュールアーキテクチャでマルチベンダ構成をサポートする「HP OpenView Storage Data Protector」

 クライアント/サーバ型のバックアップソフトだが、他社のソフトウェアとライセンス体系が異なり、バックアップ対象のシステムを拡張してもライセンスコストを抑えられるのがメリットだ。一般的なバックアップソフトでは、対象サーバが増えるとライセンスコストも増加するが、Data Protectorは対象サーバの台数にライセンスの制限がない。そのため、将来的にファイルサーバを増設してもバックアップソフトに掛かるコストを抑えることが可能だ。

 機能の点でもエンタープライズ系バックアップソフトウェアに求められる機能を一通り提供しているだけでなく、HP独自の機能として「ゼロダウンタイム・バックアップ」と「インスタントリカバリ」機能を搭載し、運用の柔軟性を高めている。

 両機能とも「ミッションクリティカルなアプリケーションのデータバックアップやリカバリにかかる時間を最小限に抑えたい」という要求に確実に応えられるため、ミッションクリティカルなハイエンドサーバ「HP Integrity Superdome」と組み合わされ、24時間無停止のデータベース保護策として活用されていることが多いものだ。

「ゼロダウンタイム・バックアップ」と「インスタントリカバリ」機能とは?

 ゼロダウンタイム・バックアップは、24時間体制で稼働しているデータベースのバックアップなどに向いた機能だ。ディスクアレイのスナップショット機能を利用してディスクアレイ内にコピーボリュームを作り、あるタイミングでこれを切り離す。切り離したコピーボリュームをアプリケーションサーバからバックアップサーバにつなぎ換え、時間をかけてバックアップする。これにより稼働中のアプリケーションの性能への影響を最小限に抑えられる。ディスクアレイの機能を利用しているため、同等の仕組みをユーザーが独自に作り込んで実現することも可能だが、Data Protectorでは独自のGUI'によるスケジュール機能が提供され、実装時の作り込みが不要な点が大きなメリットといえるだろう。

 インスタントリカバリは、オリジナルボリュームのコピーを最大3世代保存し、瞬時にリカバリできる機能。「1時間に1回スナップショットを取り、3時間前のスナップショットまで保存しておく。リカバリイメージを世代管理し、復旧時にGUI上で選択する」といった運用を実現できる。リカバリの際は、データコピーではなくボリュームの付け替えにより、ごく短時間で完了する。


・Data Protector Express

 より小規模なx86サーバ環境向けのバックアップソフトとしては「HP StorageWorks Data Protector Express」が用意されている(テープドライブ、オートローダ製品には標準添付)。Windows/Linux/NetWare環境を対象とするProLiantサーバ向けのソフトだ。

 特徴的な機能として「ベアメタルディザスタリカバリ」を搭載しており、OSイメージを丸ごとバックアップすることが可能だ。通常のバックアップでは、対象とするデータはユーザーデータのみであるため、完全にサーバが破損した場合には、まずOSをインストールし直し、サービスパックやアプリケーションをインストールしてから、データをリストアする必要がある。しかしこの機能では、テープドライブやCD-ROMからサーバをブートし、OSやアプリケーション、ユーザーデータを含むサーバのディスクイメージを一度に完全に復元することが可能だ。

 小規模環境では、ユーザーデータのバックアップをきちんと行っていたとしても、サーバのOS環境の復元手順がドキュメント化されていないなどの理由でリストアが困難なことも多い。ベアメタルディザスタリカバリはこうした状況を回避し、運用時のサーバのディスクイメージを完全にバックアップ/リカバリできるため、そのメリットは大きい。

 データ保護は、コンプライアンス(法令順守)対応事業継続性の問題などと絡み、どのような規模の企業にとっても等しく重要なものだ。しかし、投資可能な予算額には差があるため、すべての企業が遠隔地に予備サイトを用意するといった保護策を取れるわけでない。このため、低コストで確実な保護を実現するために、さまざまなレベルでのバックアップやデータ保護ソリューションを組み合わせることで、適切な対策を施す必要がある。

 HPでは、そのために必要となるデバイスからバックアップソフトまで必要なコンポーネントをすべて自社でそろえ、統一的なアーキテクチャーに基づいたソリューションを実現している。

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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年6月30日