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» 2006年06月16日 10時00分 公開

ITトレンド 〜データマネジメント編〜:ストレージベースの遠隔バックアップ環境を構築

事業継続計画に対する社会的関心が高まるなか、ネット証券のカブドットコム証券株式会社(以下、カブドットコム証券)は広域災害を視野に入れたディザスタ・リカバリ対策として、新システムセンター(福岡)の構築に取り組んでいる。その基盤インフラとして採用したのが、ストレージシステムをベースにしたヒューレット・パッカード(以下、HP)のDRソリューションである。カブドットコム証券 システム統括部長の阿部吉伸氏に新システムセンター構築の背景とその成果などを聞いた。

[ITmedia]
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 インターネット専業の証券会社として急速に業績を伸ばしているカブドットコム証券株式会社。顧客の利益を第一に考えるリスク管理追求型取引をモットーに、同社では「逆指値」「W 指値」など独自の条件注文サービスを提供。サービスの品質を重視する姿勢が多くの投資家から高く支持されている。こうしたリスク管理追求型取引を可能にしているのが、ネット証券唯一の自社開発路線だ。

カブドットコム証券株式会社 システム統括部長 阿部 吉伸氏

「ネット証券は取引のほとんどがネット上で完結する特殊な業態。それだけに証券取引業務を支えるシステムが重要な意味をもちます。そこで、リスク管理追求型取引を強化し、お客様に付加価値の高いサービスを提供するため、自社開発に取り組んでいます」と同社システム統括部長の阿部吉伸氏は自社開発路線の重要性を説明する。


事業継続計画の実現に向けDRサイトの構築を検討

 一方、最近は地震・火災などの自然災害、テロなどの人的災害、不測のシステム障害などに対応し、迅速にビジネスを再開できる事業継続計画に対する社会的関心が高まっている。特にミッションクリティカルな証券業界では、事業継続の死守が重要な経営課題となっている。そこで同社では万が一の場合に備え、IT システム、ファシリティー、組織体制を含めた総合的なコンティンジェンシー・プラン(危機管理計画)を策定。

 その一環として、安定的かつ継続的なサービスを実現するとともにお客様の資産を保全し、安心と安全を提供するため、広域災害に対応したディザスタ・リカバリ(DR)対策への取り組みを打ち出した。具体的には東京にある現在稼動中のシステムセンターとは別に、遠隔地に新システムセンターの構築を計画。昨年夏より検討を開始し、災害時には迅速なシステムの切り替えを行い、本社機能を完全に代替できる体制を目指した。

 「広域災害に備えるには本センターと同時被災しない立地が必要。そこで東京から約1000km 離れた福岡を候補地に選定しました。東京からの交通アクセスも利便性が高く、都市機能も充実しており、事業展開に有効と判断しました」(阿部氏)。

HPのDRソリューションを導入。高速な遠隔バックアップが可能に

 同社のシステムは顧客管理系システム・注文管理系システムのOS にWindows、RDBMS にMicrosoft SQLServer を、勘定系システムのOS にはHP-UX を主としたUnix、RDBMS にはOracle を用い、これらをHP Integrity SuperDome を中心としたマルチプラットフォーム環境で稼動している。「そのため、新システムセンターでも、ホストやOSなどのインフラ環境に依存しないバックアップ環境が必要でした」と話す阿部氏。

 しかも、同社の口座数は約49万。ピーク時には3万人以上ものアクセスが集中し、膨大なトランザクションを処理しなければならない。処理遅延を避け、高速かつ効率的なバックアップを行うために、同社はストレージシステムをベースに最新オープン系テクノロジーを用いたHPのDRソリューションの導入を決定した。

 中核をなすストレージシステムには高信頼性のハイエンドモデル「HP XP12000」などを採用。システムセンター内はサーバー、ストレージ間をファイバ・チャネル(FC)で接続したSAN を構成。さらに東京・福岡間は1Gbps のメイン回線を中心としたWAN 環境を導入し、マルチプロトコル対応スイッチを介することで、FC のデータをTCP/IP に変換。WAN上はTCP/IP通信とすることで、一般的なアプリケーション間の通信も行えるようにした。

概念図

 ストレージシステムにHP XP12000 を採用した理由について、阿部氏は次のように語る。「ミッションクリティカルなデータを扱う当社にとって、確実かつ効率的なバックアップは譲れない条件でした。HP XP12000 は高速、高信頼のデータ複製を行えます。ストレージ統合も可能で、ビジネスの成長に合わせたシステム拡張にも柔軟に対応できる点を高く評価しました」。

 また、同社はHP Integrity SuperDome を導入しているため、ストレージ間との連携を考えた場合、総合的なサポートが不可欠だった。「HPさんはワールドワイドでの実績があり、トータルのサポート体制が充実しているため、安心してお願いすることができました」と阿部氏は説明する。

ほぼリアルタイムのシステム復旧を実現。サービスの質の向上と信頼性向上に貢献

 災害対策では実際に災害が発生してからデータを復旧し、システムが再稼動するまでの所要時間をいかに短縮できるかが重要なポイントになる。同社は5分以内での株式注文の執行を保証し、万一の遅延の場合は差額を返却する国内証券業界初の「SLA制度」を提供していることもあり、今回の東京・福岡間のバックアップではRPO(許容できる最大のデータ消失量)とRTO(許容できる最大のシステム停止時間)の短縮化を最重視した。

 具体的にはRPOは5分以内、RTOは30分以内を目標とし、ほぼリアルタイムに近いデータ及びシステムの復旧を実現した。「これにより、万が一の場合でも、迅速なビジネスの再開が可能。お客様の資産を保全し、安心と安全を提供するという当初の目的を達成することができました」と阿部氏はその効果を強調する。

 また、ネット証券は取引のほぼすべてをネット上で行えるため、相手の顔が見えない。それだけに証券取引業務を支えるシステムの信頼性確保が重要なのだ。「ネット証券はその利便性や取引手数料の安価なプライスに目が向きがちですが、今回の災害対策の実現により、当社のサービスに対する社会的信頼性も向上できたと自負しています」(阿部氏)。

 新システムセンターは、まず勘定系データベースシステムのDRサイトとして4月末までに災害復旧基盤を整備した。今後も機能拡充を図り、9月末までに勘定系復旧対策を完了する予定だ。さらにデータバックアップ専用のサイトとしてではなく、将来的には第2のビジネス拠点として展開していく方針。こうした将来的な青写真を見据えて、積極的な基盤構築を進めている。

 阿部氏は「証券取引業務を支えるシステムの安定稼動を図るべく、今後も事業継続計画を推進し、当社の強みであるリスク管理追求型取引を一層強化していきます」と今後の展望を語った。


阿部氏へのインタビュー内容を動画でご覧いただけます。
阿部氏インタビュー
http://bit.sbpnet.jp/online/interview060510/index.html

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