遅れを取り戻せ! 日本のディザスタ・リカバリ新潮流HP×ブロケード スペシャル対談

地震国と言われながら日本はITシステムの災害対策が遅れがちだった。しかし、ストレージやデータの統合が進む中で、いまこの取り組みが大きく前進しようとしている。企業のストレージインフラを支える技術を提供するブロケードと日本HPがディザスタ・リカバリについて対談した。

» 2006年06月21日 10時10分 公開
[ITmedia]
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 企業におけるストレージインフラとしてSAN(Storage Area Network)の導入が急速に進んでいる。ストレージのネットワーク化は柔軟なインフラをもたらし、データの統合を現実的なものにしている。特に地震国と言われながら日本ではディザスタ・リカバリ(DR)の取り組みが遅れがちだった。これがSANを基盤にしたストレージ・データ統合が進む中で、いま大きく前進しようとしている。

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)とブロケード コミュニケーションズ システムズ(ブロケード)は、ストレージのネットワーク化に大きく貢献してきた2社だ。両社のパートナーシップは1998年から始まっており、日本HPの「アダプティブエンタープライズ」構想、ブロケードの「次世代データセンター」構想はお互いに補完し合う点が多い。企業のストレージインフラを支えるテクノロジーを提供する2社が、注目されるDRについて語った。

ブロケードの次世代データセンター構想

ブロケード小宮氏: ブロケードが新しく発表した「次世代データセンター」構想は、大きく2つのコンセプトを含んでいます。1つは、SAN(Storage Area Network)でブロックデータを統合すること、もう1つは、ブロックよりも大きな単位であるファイルに注目し、ファイルエリア・ネットワーク(FAN)というソリューションを実現していくことの2つです。この2つを軸に、企業のビジネスロジックを支える構造化/非構造化データを保護したり、より高速にアクセスしたりするためのソリューションをそろえていくというソリューション・マップを描いています。その中にはもちろん、SANを利用したBCP(Business Continuity Plan:事業継続性計画)の実現なども含まれてきます。

ブロケード コミュニケーションズ システムズ システムエンジニアリング統括部長 テクノロジー エバンジェリスト 小宮 崇博氏

 ブロケードが唱える「次世代データセンター」の特徴を示す3つのキーワードとして、“Connect(接続)”“Control(管理)”“Consolidate(統合)”という「3つのC」があります。この中でも“Connect”が意味するものは、ビジネスロジックを実行しているすべてのサーバをSANやFANに接続・統合していくことを意図しています。従来ブロケードは、ファイバチャネルという技術エリアで先進のソリューションを提供してきましたが、ここではファイバチャネルに限定せず、iSCSIなども含めたより広い技術範囲に対応していきます。これにより、ビジネスロジックを実行するサーバやストレージをすべて統合していこうと考えています。「では、具体的にどういうワークフローでデータを保護していくのか」と考えたときに、HPとの共同ソリューションにつながっていくことになります。

 また、データをつないで(Connect)統合するためにはどうしたらよいかというと、移動したりコピーするといった機能が必要になります。そうした作業を集中管理するために必要となるのがControlです。そして、Consolidationは、つないだりコピーしたデータを大きな器にまとめていくという技術になります。

 これらの技術要素を活用し、ITシステムのデータだけでなく、ビジネスロジックそのものまでも新しいものに置き換える「ビジネスロジックのライフサイクル管理」の基盤となるのがブロケードの次世代データセンター構想となるわけです。ブロケードでは「アプリケーション・ワークロードのマイグレーション」と表現していますが、サーバ上で実行中のビジネスロジックに可搬性を与え、ネットワークによる“Connect”を実現することで、従来は物理的にも1カ所にまとめられた固定的な存在であった“データセンター”が地理的にも論理的にも分散して配置され、それを仮想的にまとめることで1つのデータセンターとすることができます。その際に、HPのAdaptive Enterprise構想との組み合わせが重要な意味を持ってきます。

HPの「4つのC」

HP渡辺氏: HPでは、アダプティブエンタープライズ構想を掲げています。あえて日本語にすれば“適応型企業”となりますが、要するに「いかに市場の変化に追従し、いかに迅速に自身のITシステム/戦略を変更していけるか」という点に注目したコンセプトです。

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズストレージ・サーバ統括本部 ストレージワークス製品本部 本部長 渡辺 浩二氏

 少し前の企業戦略は、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター氏が『競争の戦略』(1980年)などで示した“Positioning(ポジショニング)”を軸に展開していました。この企業戦略では、一度決めたポジショニングを崩さず、それを研ぎ澄ましていくことで競合との差別化を図っていきますが、東のハーバードに対する西の(シリコンバレーに近い)スタンフォードからは、同じポジションを維持し続けていくことは企業の強みにならず、自社の強みを明確にしながら、周囲の状況の変化に応じてポジションを柔軟に変化させた企業が生き残っていると指摘しました。

 具体例としては、HP自身もそうですし、最近ではApple Computerがよい例でしょう。つまり、周囲の変化に即応していかに迅速に自身のポジショニングを変えていけるかが重要だと考えられます。こうした考え方を取り込んで構築されたのが、HPのアダプティブエンタープライズです。

 こうした観点から企業のITインフラを考え直してみると、変化への即応力の獲得を阻害しているいくつかのポイントがあることが分かります。それらを解決するのが、HPが掲げる「4つのC」です。“Continuity”“Control”“Consolidation”“Compliance”の4つを軸に、これらの要件を満たしながら、同時に変化への即応力を実現する必要があります。こうした要件を満たすために提供するのが、HPの技術、製品、ソリューションということになります。

HPの「4つのC」とブロケードが唱える「次世代データセンター」の特徴を示す3つのキーワード

日本でのDR/BCPへの取り組み

ブロケード小宮氏: 米国では、2002年くらいからDRに対する取り組みが本格化していますが、日本では立ち遅れがちでした。というのも、災害対策を考える際に、まずITインフラが統合されていないとコスト面で極めて高価なソリューションになってしまうからです。「まず統合が先」ということになるわけです。

 実際、従来からDRを実現するための技術は存在していました。例えば、ダークファイバを使った遠隔接続やFC over IPによるIPバックボーンでの遠隔接続は技術的には可能だったのです。ところが、現状の日本のユーザーが置かれた状況に適合する「運用のプラクティス」は欠けていたため、なかなか普及しませんでした。しかし、年を経るごとにこの分野のノウハウがブロケードにもHPにも蓄積されてきて、ようやく本格化しようとしています。

HP渡辺氏: もともと日本は自然災害面では「危険な国」であり、DRに対する需要自体は高かったのですが、財務面の問題で導入への障害がありました。しかし、日本の組織でも統廃合が進んでおり、財務的な余裕も生まれています。また、運用体制が企業内の部門ごとにバラバラで、標準化できていなかったという面も、企業統合が進む過程で解消してきています。実感として、DRに対するユーザー企業の情報収集は3年くらい前が最も盛んだったように思います。最近はその段階を越え、具体的な導入を検討する時期に入ってきたように思います。

DRソリューションを支える製品展開

ブロケード小宮氏: HPが販売する「Bシリーズ ファイバチャネル・スイッチ」では、2005年から4Gbpsに対応した製品の投入が始まっています。特に強調しておきたいのは、DRへの対応です。SANファブリックは比較的高価なソリューションでもあり、単一システムに投入するのはコスト的に難しいと思われる場合もあるかもしれませんが、統合というキーワードで考えると十分に投資対効果を実感していただけると思います。具体的には、統合に必要な多ポートの製品として「HP StorageWorks 4/256」という製品があります。最大で256ポートをサポートでき、これと、エッジに接続される「マルチプロトコル・ルータ」というゲートウェイ製品を組み合わせることで、遠隔地にあるシステムをSANレベルで統合でき、ビジネス・ワークロードの移動やDRの実現が可能になってきます。

 Bシリーズのマルチプロトコル対応製品では、ブレードとして提供されるプロトコル・モジュールをシャーシに差すことで必要に応じて拡張していけるという特徴があります。約1年前にこの製品が市場投入されたことで、DRや、それを含むより上位のBCPというコンセプトを実現するために必要となる技術的な基盤はできあがったといえるでしょう。

ブロケード コミュニケーションズ システムズ 小宮崇博氏(左)と日本ヒューレット・パッカード 渡辺浩二氏(右)

HP渡辺氏: ブロケードのマルチプロトコル・ルータでのプロトコル変換の技術と、HPが持つストレージ・サーバにおけるアプリケーションレベルでの同期の技術や、ストレージにおけるデータの同期コピー技術を組み合わせることで、DRやBCPを実現するための遠隔クラスタリング(HP Continental Cluster)ソリューションを実現しています。従来、FCIPのプロトコル変換に特化したニッチ製品は存在していましたが、ブロケードが提供を開始したことにより、ファイバチャネル・スイッチのデファクト・スタンダードとも言えるブロケード製品でソリューションが構築できるようになった点がメリットといえます。

 導入時の注意事項としてここで一点指摘しておきたいのは、シャーシにブレードを追加することで拡張できるデザインになっているため、導入時点で必要容量ギリギリのサイズのシャーシを選んでしまうと、拡張の際にシャーシごと交換する必要が生じてコストがかかってしまうということです。あらかじめ将来の拡張を見越して余裕のあるシャーシサイズを選択することが、トータルでのコストの削減につながるはずです。

ブロケード小宮氏: さらに、現在は次世代のマルチプロトコル製品の投入時期で、日本HPから新しいモデルが来月7月6日に発売される予定で、同日にはHP市ヶ谷事業所にて新製品を使った災害対策システム構築に関するセミナーを開催予定です(詳しくは文末のセミナーリンクをご覧下さい)。新製品では、より高性能を実現し、従来以上の大規模な環境をサポートすることができるようになります。

 特にFCIPの部分で高性能を実現します。従来製品ですと、ギガビットイーサネットを使用しても、実効スループットは50%程だったのですが、ほぼラインレートでのスループットを業界で初めて可能にしています。これにより、複数サイトのオンラインDRを安価なIPバックボーンを利用して実現できるようになります。

HP渡辺氏: またHPとブロケードでは、デバイスレベルできちんとした相互接続性を検証していることも、サポート・信頼性の面で大きな点であると言えます。さらにHPでは、社内に全世界で700名以上のブロケード認定技術者を確保し、ユーザーに対して万全の対応ができるよう体制を整えており、24時間365日の対応も不安なく提供できます。


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主催:日本ヒューレット・パッカード株式会社
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提供:日本ヒューレット・パッカード株式会社
制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2006年7月20日