仮に、SOA(サービス指向アーキテクチャ)でアプリケーションをスムーズに連携させたとしても、それでうまくいくものではない。重要なのは、業務に介在する人と組織の再編や実際のビジネスプロセスの見直し、場合によってはゼロから作り直すといった方法も含めて、企業として適切な施策を柔軟に実践することにある。つまり、個別のアプリケーションは個別の問題を解決できても、市場でヒットする新製品を企画してくれるわけではないということである。
これは、いわゆる日本版SOX法への対応などの内部統制管理と、持続的な企業の成長に似ている。SOX法対応のアプリケーションを利用すれば、アクセスコントロールや自動化などで個々の問題を解決したり、監査に耐え得る記録を残すことはできる。しかしながら、それが企業の健全かつ持続的な成長の方策を示してくれるわけでない。コンプライアンスに対応しながら、企業の成長のための行動はどうすればいいかは全社規模で検討し、対応していくべきことなのである。
ここ最近、製造業者の不祥事のニュースが相次いで報道されている。それぞれに、問題の原因は異なるであろう。とはいえ、大企業なのだから、なんらかのPLM関連アプリケーションが導入されていたはずだ。例えばBI(ビジネス・インテリジェンス)を導入して現状分析を行っていたとしても、その結果を基に企業の組織や物事の決め方が柔軟に改善できなければ意味がない。サポート担当者に上がってくるクレームを瞬時に分類して保存できても、それを経営層や企画、設計部門に確実にフィードバックして、最終的にアクションに結びつけられなければ宝の持ち腐れになってしまうのである。
現在、シャープがどのようにPLMに取り組んでいるのかはっきりとは分からないが、冒頭のようにユーザーのハガキが研究者のところにやってくるといった取り組みは、企業文化として継承されていると想像できる。「完ぺきなPLM」というアプリケーションは現在存在しない。適材適所のアプリケーションの活用とともに、部門を超えたPLMのグランドデザインを描く必要がありそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.